メール以外のメッセージングツール、たとえばIM、SNS、SMS、Twitter、Skype、IRCなど多くの手段とアプリケーションがあり、若い世代ほどこういったツールを活用する傾向にある。スパムやフィッシングメール、ウィルスメールが多くなったメールはもはやそれほど便利に使えるツールというわけでもない。

2009年3月12日から15日までの4日間、東京で開催された『AsiaBSDCon 2009』にsendmailのオリジナル開発者であるEric Allman氏が登壇。Eric Allman氏は現在ではSendmailでChief Science Officerを務めている。基調講演としてインターネットやメールの発展の歴史、そしてこれからのメールについて説明した。

Eric Allman氏 - Chief Science Officer, Sendmail

インターネットの歴史やメールの歴史はさまざまな場所で紹介されているのでここでは割愛する。氏はインターネットの順調な成長を時にコミカルに紹介。最初はファイルをコピーするツールだったメールもコミュニケーションとしての色を強め今に至った経緯を説明した。しかしながら歴史紹介の後半は、爆発的なインターネットの普及とともにメールとスパム、メールとウィルスの歴史といった内容になっていた。

969年にラフスケッチされたARPANET

1977年には米国を中心に世界につながるARPANETへ発展

Eric Allman氏はメールの比較的近い将来として次の予測を紹介した。

  • 送信者の信用をベースとした認証機能メールは時間とともに今後も成長を続けることになるだろう
  • UTF-8の採用がさらに進むことになるだろう
  • メールアドレスの国際化への移行はゆっくりとしたペースで進むことになるだろう
  • メールシステム関連の複雑さの向上もありメールは自分でホストを運用するよりもホストプロバイダが提供するサービスを使う傾向がさらに進むだろう
  • 若者はSMTPベースのメールからIMやSNS、マイクロブログなどを使ったメッセージングへ移行していくだろう

こうした予想を説明したうえで、なお次の理由からメールは生き残り続けることになるだろうと説明した。

  • 依然として手紙をやりとりするよりもメールの方がリーズナブル
  • ビジネス用途にはメールの方が向いている
  • IMはタイムゾーンをまたぐような用途では扱いにくい

メールの信頼性を向上させるための取り組みはいくつもある。その中で送信者の信用をベースとした認証機能メールが時間とともに増えるだろうと説明しているところに注目したい。またUTF-8をベースとしたメールが増えるということ、ゆっくりながらもメールアドレスの国際化が進むと予測している点にも注目しておきたい。実際問題としてGmailのようなメールが増えると指摘しているところにも注目だ。

結局のところ適材適所であるため、メールがメッセージングツールから消え去ってしまうということは短期的には起こらないというのは妥当なところだ。また気になるMTAのシェアだが、質疑応答の中でEric Allman氏は確かな数値はわからないが、sendmailが30%、MSが20%になるのではないかと延べ、依然としてsendmailが大きなシェアを保持していることを説明した。