バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領が間もなくNASAのトップ人事を発表する予定だと、米フロリダ州地元紙のFlorida Todayが伝えている。これは同紙記者らにオバマ氏がインタビューで語ったもので、前任のMichael Griffin氏が今年1月に退任してから空席だったNASA長官の座に「21世紀のNASAのミッションにふさわしい人物」を選ぶ意向だという。

米フロリダ州ケープカナベラルのケネディ宇宙センター

ケネディ宇宙センター敷地内にあるスペースシャトルの組み立て工場。ここから発射台まで輸送される

同紙によれば、現在候補に挙がっているのは元宇宙飛行士や軍関係者で、エンジニアで学者出身のGriffin氏とは異なり、より冒険性やミッション性を打ち出したものとなる。具体的な候補は、元宇宙飛行士でスペースシャトル・コロンビア号への搭乗経験もあるCharles Bolden氏、空軍出身のJonathan Scott Gration氏とLester Lyles氏、そして元NASA管理官で現在は米エネルギー省に在籍するSteve Isakowitz氏の計4名。数週間内にも正式発表が見込まれている。

今回の人事は、オバマ政権での宇宙開発事業の方向性を決定づける出来事でもある。冷戦構造下での宇宙開発競争から発足したNASAは、アポロ計画で有人月面着陸を実現して以降、その後のスペースシャトルミッションを経て国際宇宙ステーション(ISS)建造など、さまざまな貢献を成し遂げてきた。一方でスペースシャトル・チャレンジャー号とコロンビア号の爆発事故にみられる安全性の問題、開発にかかる膨大な予算上の課題などもあり、近年は目立った成果が報告されていない。さらに2010年内のスペースシャトル打ち上げの終了、そして金融危機の到来とNASAにとっては暗い話題が続く。ある試算によれば、スペースシャトルミッション終了でケネディ宇宙センターで3500人が失業し、また周辺の関連施設で何千人以上もの職が奪われることになるという。こうした流れに新たな風を吹き込むと期待されるのがオバマ政権での宇宙戦略だ。

オバマ氏はインタビューの中で「NASAはこれまでに科学上の非常に素晴らしい発見を成し遂げてきた。だが一方で近年は迷走状態にあったことも確かだ。そこで改めて宇宙開発プログラム周辺にある興奮や関心を呼び起こすようなものを再構築したい。21世紀にふさわしいNASAのミッション構築は、新長官の最も大きな仕事の1つとなるだろう」と語っている。9日に発表されたばかりのES細胞研究解禁に続き、宇宙開発事業もまた新政権での重点課題となりそうだ。

アポロ計画で使用されたロケットブースターの実物大展示

スペースシャトルの発射台

ケネディ宇宙センター内にあるスペースシャトルの実物大模型

ケネディ宇宙センターから見たスペースシャトル打ち上げの様子。写真は2007年6月8日のアトランティス号打ち上げミッションのもの