CPUコアだけのビジネスからの脱却

米MIPS Technologiesは「MIPSアーキテクチャ」と呼ぶ32ビットRISC形式のCPUアーキテクチャを開発した企業であり、同アーキテクチャのCPUコアをライセンス販売するベンダとして知られている。「MIPSコア」と言えば、MIPSアーキテクチャのCPUコアと認識する方が多いだろう。

MIPS Technologiesでアナログ・ビジネス・グループ担当バイス・プレジデント兼ジェネラル・マネジャーを務めるシーザー・マーティン-ペレッツ(Cesar Martin-Perez)氏。以前は同社で欧州担当バイス・プレジデントを務めていた

しかし現在のMIPS Technologiesを、CPUコアだけのベンダと捉えることは正確ではない。2007年8月に、ポルトガルの半導体コアベンダ「Chipidea Microelectronica」を買収したからだ。Chipideaは「アナログ回路コア」の大手ベンダであると説明されていた。旧Chipideaの事業は、MIPS Technologies内ではアナログ・ビジネス・グループ(ABG)と呼称されている。ちなみにCPUコア事業はプロセッサ・ビジネス・グループ(PBG)である。

CPUコアとアナログ。この組み合わせに筆者はずっと、疑問を抱いていた。自分の理解力不足と断じてしまえばそれまでなのだが、組み合わせに必然性が感じられなかったのである。理由もなく企業買収を実行することはありえない。必ず、理由なり、戦略なりがあるはずである。その正体を理解したかった。

ところが思わぬチャンスが訪れた。ABGの総責任者である担当バイス・プレジデント兼ジェネラル・マネジャーのシーザー・マーティン-ペレッツ(Cesar Martin-Perez)氏にインタビューする機会を得たのである。しかもMIPS Technologiesの日本法人ミップス・テクノロジーズは3月3日に東京で、買収したChipideaの事業内容を紹介するセミナーを開催するという。そしてセミナーの最初の講演者がマーティン-ペレッツ氏なのだ。この機会を逃すことはできない。マーティン-ペレッツ氏の講演を聴講し、インタビューを実行、MIPS Technologiesについてさらに調べることによって、これまでの疑問はほぼ解消された。