――この『MR.VOCALIST 2』では、「HERO」「My Heart Will Go On ~タイタニック愛のテーマ~」「I Will Always Love You」など世界的な名曲もカバーしています。正直、プレッシャーもあったのでは?

『MR.VOCALIST 2』で最も意外な選曲が「Amazing Grace」だったそう。ドラマ『白い巨塔』(フジテレビ系・2003年)の主題歌だったことを知ると、「That’s Fine! That’s Cool!」と興味津々

エリック「もちろんさ! どうやったら自分らしくカバーできるか悩んだし、世界中の誰もが知ってる楽曲だから恐怖心もあったよ。でも最終的には、MR.BIG時代から続けているのと同じアプローチで、つまりソウルフルでありながらロックの要素もあるバラードを作り上げる気持ちでそれぞれの曲を作っていったんだ。このアルバムが完成した後、妻や友人たちに『HERO』の僕が歌う部分だけ聴かせてみたら、原曲がマライア・キャリーだと気づかない人も多かったんだ。だから、『自分らしくエッジを効かせた歌声で聴かせたい』との思いは実現できたんじゃないかな」

――ところで、今年はMR.BIGが7年ぶりに再結成されると聞いたのですが……

エリック「ノーノー! その辺はシークレットで頼むよ(笑)。……というのは冗談で、再結成に関しては僕も驚いているんだよ。ビリー(ベース)やパット(ドラムス)とは約6年間、ポール・ギルバート(ギター)とは10年以上も会っていなかったんだ」

――そんなに長い期間、他のメンバーと距離を置いていたとは……

エリック「ひょっとしたら『MR.VOCALIST』シリーズが再結成の引き金になったのかもしれないね。というのも、ポールと再会した時、『アルバムを聴いてるよ、気に入ってるよ』と言ってくれたんだ。素直に嬉しかったな。それにしても、ポールといいマーティ・フリードマンといい、才能あるギタリストが日本の曲に詳しいのはどうしてだろうね?(笑)」

――MR.BIG再結成も楽しみなところですが、『MR.VOCALIST 2』リリース日の3月4日には、都内で一夜限りのスペシャル・ライブがおこなわれます

エリック「僕にとっては『ブラインド・デート(未知の相手とのデート)』みたいなものだよ。まったく初めての経験だからね。ライブに関しては、アップテンポな曲も演奏しつつ、バラード曲中心の構成にするつもり。ファンにとっても、暗い会場でバラードばかり歌うエリック・マーティンを見るのは初めての経験じゃないかな。といっても、エモーショナルに歌うだけじゃなくて、僕のキャラを生かした、ユーモアに富んだステージになるはず。いずれにしても、見て損はさせない、楽しいライブになることを約束するよ」

――最後に本作に関して、ファンへのメッセージをお願いします

エリック「今回は70年代から現在に至るまでの世界のヒット曲を網羅していて、スピリチュアルかつロマンティックなアルバム。前作と同様に『愛』がテーマだけど、このアルバムを聴いたら過去についた嘘まで思い出してしまうかもね(笑)。でも、問題に直面した時に自分を救ってくれた曲が必ず入っているはず。過去の失恋を癒してくれる曲から、明日からがんばろうと思える曲まで入っているから、ぜひ聴いてほしいね」

「ずっとファンでした! 学生の頃から『LEAN TO IT』を聴いてました」という本誌カメラマン(29歳)を前に、MR.BIGの曲「TO BE WITH YOU」を歌う場面も。めちゃめちゃいい人!!

PROFILE

Eric Martin

1960年10月10日、ニューヨーク州生まれ。ビリー・シーン、ポール・ギルバート、パット・トーピーとMR.BIGを結成し、’89年にデビュー。『LEAN INTO IT』(1991)収録の「TO BE WITH YOU」が全米3週連続1位になるなど大ヒットし、日本でも多くのファンを獲得。'02年の解散後には、B’z松本孝弘のソロ・プロジェクト"TMG"のボーカリストを務めたことも。’04年以降は育児に専念していたが、昨年、音楽シーンに復帰し、『MR.VOCALIST』は10万枚を売り上げた。その続編となる『MR.VOCALIST 2』が3月4日にリリースされるほか、オリジナル・メンバーでのMR.BIG再結成が正式に決定。今年6月に再結成ツアーがおこなわれる

撮影:石井健