総務省情報通信政策研究所は3月2日、日本経済研究センターと共同で、情報化投資の加速による経済再生に向けた中間レポートを公表した。同レポートは世界的な経済危機を考慮しつつ、情報化投資の加速が2010年代の中期的な日本経済の成長率や雇用にどのような影響を与えるかについて、2種類のシミュレーションを実施したもの。

資本と労働による「基本モデル」、資本を情報資本と非情報資本に区別した「情報資本明示モデル」、情報資本のネットワーク効果を考慮した「ネットワーク効果モデル」の3種類からなる生産関数を用いたシミュレーションでは、、2008-25年の潜在成長率を試算したところ、2010-2020年における平均の潜在成長率は「基本モデル」で1.6%、「情報資本明示モデル」で2.4%、「ネットワーク効果モデル」で2.7%となったという。つまり、情報資本を明確に意識した経済構造に移行すれば、潜在成長率は0.8ポイント上昇、情報資本のネットワーク効果を活かしたソフト型の経済構造に進化すれば、1.1ポイント上昇するという。

3種類からなる生産関数を用いたシミュレーション結果(出典: 経済再生研究会)

世界経済が2010年度には緩やかに回復する「ベースラインシナリオ」を基に、供給・需要の両面を考慮したマクロ計量モデルでは、設備投資が2010年度から上昇する「投資加速シナリオ」、情報化投資の比率が2010年度から上昇する「情報化投資加速シナリオ」の2つのシナリオにより、2011-20年の各種成長率や雇用等の主要指標を試算したところ、2010年代の平均の成長率は「ベースラインシナリオ」(実質1.6%、名目1.8%)と比べ、「投資加速シナリオ」や「情報化投資加速シナリオ」では実質・名目ともに1ポイント強上昇したという。

2010年代の平均の潜在成長率は「投資加速シナリオ」で1.5%、「情報化投資加速シナリオ」で1.9%であり、情報化投資は生産性向上を通じて潜在成長率を高める効果が大きいとしている

雇用面では「情報化投資加速シナリオ」が「投資加速シナリオ」よりも就業者数は少なく、失業率も高いという。また、情報化投資の加速で生産性が高まるため必要な雇用が少なくて済み、余剰となった労働力を活かして新市場を創出すれば、一層の雇用増を期待することが可能とみている。

そして同研究所では、このようなシミュレーション結果に基づき、次の3点を提言している。

・不況脱出の処方箋として、まずは民間部門の大幅な投資促進を実現するための大胆な政策が必要である。
・新たに行う投資の内容を情報化投資にシフトさせることで、成長率の上乗せや持続成長が期待できる
・知識経済化に対応した経済構造への体質転換に成功すれば、これらの効果を最大限に享受し、2%台後半の経済成長を実現できる可能性を秘めている