「ボーイング747シリーズは、十年以上の長きに渡りに空を飛んできましたが、間もなくB747も退役を迎えます。B747にとっては引退の花道に相応しいデモフライトだと思っています。「JALバイオ・フライト」、間もなく出発いたします」。日本航空副社長・地球環境担当のコメントの1時間後、バイオジェット燃料を入れたJAL B747 - 300(登録番号JA812J)は、報道発表の会場となった羽田空港JAL西ライン整備ハンガーを離れ、仙台沖へ向けて飛び立った。

JAL西ライン整備ハンガーで待機するJA812J。集まった報道関係者などは200人以上

アジア初となる、バイオジェット燃料を用いたデモンストレーションフライト「JALバイオ・フライト」が1月30日、実施された。環境に配慮した代替燃料の開発促進を目的とし、日本航空、ボーイング、プラット・アンド・ホイットニー(以下P&W)、UOP、Sustainable Oils、日揮ユニバーサルが共同で行なうデモフライトで、当初は八丈島沖まで飛び、約1時間30分後に再び羽田空港に戻る予定だったが、当日の天候(雨)で仙台沖に変更されてのフライトとなった。日本航空サイトでは、この結果を「世界初! 「カメリナ」を主原料とするジェット燃料で「JALバイオ・フライト」成功! 」 と発表している。なお、バイオジェット燃料を用いたデモンストレーションフライトは世界で4例目。

報道発表では、日本航空をはじめとする共同企業各社の代表がコメントした。JAL西松遙社長(登壇中)は「バイオ燃料が実用化されれば世界に先駆けて導入していきたい」と意気込む

今回は、ボーイング747-300(JA812J)の右主翼にある第3燃料タンクにバイオ混合燃料を入れ、4基あるエンジンのうち、右内側エンジン(第3エンジン、P&W社製JT9D)のみをこの混合燃料で回すという。バイオ燃料は、アブラナ科の植物「カメリナ(84%)」、「ジャトロファ(15%)」「藻(1%)」から精製されたもので、従来のジェット燃料(JetA-1)と1対1の割合で混合される。このデモフライトの前日、整備場にて実際にこの混合燃料でエンジンを回したという。整備担当スタッフによると、「昨日、燃料を入れてエンジンは回していますが、いつもの燃料との違いはほとんどない。実際、飛んでみないとわからないところが多いが、地上でのチェックの時点では、エンジンの回転数の上がり具合、燃焼温度や出力なども計器で見て、従来の燃料とパフォーマンスが変わらないということを確認している」と話す。

カメリナ84%、ジャトロファ15%、藻1%を精製したバイオ燃料を混合したバイオジェット燃料で回るP&W社製JT9Dエンジン。今回使用されるバイオ燃料は無色透明だ

日本航空資料より抜粋。左が「JALバイオ・フライト」のイメージ図、右がバイオジェット燃料の主成分となるカメリナ(Camelina)

そして今回バイオ燃料に採用されたカメリナ、ジャトロファ、藻などは、地球環境負荷が小さいとされている植物らしく、「非食物系であり、かつ持続性、生産効率に優れた第二世代バイオ燃料に分類される」と同社広報はアピールする。こうした代替燃料候補によるテストフライトでの主なチェック項目は、(1)燃費性能、排気ガス温度などの、運行中のエンジン性能の確認(2)約1万メートル(35,000フィート)の高高度での当該エンジンの加速・減速性能の確認(3)空中での当該エンジンの停止・再始動の確認で、そのすべてが「無事確認できた」としている。

「日本航空は燃料搭載の効率化、機体軽量化などを通じて、航空機から出る二酸化炭素の排出量を減らす取り組みを15年前から行なっている」と語るJALの西松社長。同社は航空機が排出する二酸化炭素量を2010年度までに1990年対比で有効トンキロ輸送量あたり20%削減することを目標としているほか、適正高度の選択や「テイラード アライバル」などの新着陸方式など運航を検討中だという。これらのデモフライトのデータをもとに、バイオ燃料の実用化が急がれ、B747であればエンジン4基すべてをバイオ燃料で回すことに期待がかかっている。

複数の関係者に「バイオ燃料のお値段はどれくらいになるんですかね」と聞いてみると、「まだ算出していない」「わからない」などという答えが返ってくるばかり。実用化はいつになるのか