仕事と生活の調和を目指す"ワークライフバランス"に取り組む企業の従業員を対象に、福祉施設の入所を優遇する措置を東京都足立区が導入する。同区では、ワークライフバランスを推進する企業を認定する制度を2009年度から開始する。これに先駆け、2月13日までの間、希望企業の申請を受け付けている。

同制度は、足立区を本拠とする従業員数300人以下の企業が対象。従業員の意見・要望を反映できる体制が構築されているかや、ワークライフバランス支援策の社内の周知状況、利用実績などをヒアリングや実地調査を行い、認定企業が選考される。

認定を受けた企業は、区が斡旋する中小企業融資利用の際の信用保証料の補助や、地域学習センター利用時の使用料の減額などの経済的な優遇措置が受けられる。その他、区の広報やホームページなどで取り組み事例が紹介されるなど、企業のPR活動を援助する。

また、認定企業の従業員の家族に対しても優遇措置を提供する。具体的には、区立保育園や学童保育室、特別養護老人ホーム施設に家族が入園・入所を希望する際に、入所基準指数を1点加点する。

認定企業の決定は、3月17日に開催される選考委員会で行われ、同月下旬にも公表される。

同区では2009年度の保育園、学童施設の募集はすでに締め切られている。今回の認定制度を担当する、足立区男女参画プラザ所長の中嶋篤子氏は「認定後に申請をすることはできるが、4月時点で定員がいっぱいになってしまうため、加点が実際に機能するのは実質的には2010年度以降になる」と説明している。

同区では、ワークライフバランスの推進策として、従業員数が100人以下の企業を対象に、専門のコンサルと社会保険労務士を派遣する制度を2008年度から開始。「100人以上300人未満の従業員規模の企業も応援していきたいという思いで認定制度を新たに創設した」と中嶋氏。

自治体によるワークライフバランスの企業認定制度の実施は、東京都内では新宿区に次いで2番目。しかし、従業員の家族を対象にした優遇措置では全国的にも珍しいケースとなる。中嶋氏は「今回の試みは、縦割り型の行政だと難しいところがあるが、他部署にもいろいろと協力してもらい、包括的な支援サービスとしてうまくまとめることができた。ひとつの参考事例として、他の自治体にも受け止めていただいた上で、それぞれの地域で取り組める方策を実践してほしい」と、今回の制度開始にあたっての経緯や今後の展望についての期待を語った。