このようにさまざまな製品が発表/発売されてきた2008年ですが、各メーカーの方々に今年、自社で発売した製品で「最も印象に残った製品」聞いてみました。一体どのような製品が印象に残っているのでしょうか。

東芝

まずは、東芝からです。東芝は総合メーカーで家電製品からAV機器まで(ほかにも照明器具や、原子力発電所なども)取り扱っています。しかし、すべての部門に問い合わせるわけにもいきませんので、ここでは、AV機器を扱っている部署と、家電製品を扱っている部署に聞いてみました。 まずは、AV機器からでは、「今年一番印象に残っているのは、超解像度技術を搭載したRAGZAシリーズと、同時に発表されたレコーダー、VARDIAシリーズです」とのこと。

REGZAが搭載している超解像度技術「レゾリューションプラス」は、オリジナルの映像(A)を高解像度化した映像(B)を作成したあと、その高解像度化した映像(B)から、オリジナルの映像(A)と同じ解像度の映像(B')を作成、オリジナル(A)と、新たに作られた映像(B')を比較して、その差がなくなるように、高解像度化処理側(B)にフィードバックを行うというものです。一般的なスケーリングに比べて、自然かつ緻密な高解像度映像が作られます。

REGZAの新ラインナップは、ZH7000/Z7000/FH7000/F7000/C7000の5シリーズ。ここれらのなかで、「レゾリューションプラス」が採用されているのは、映像エンジンに「メタブレイン・プレミアム」を搭載したZH7000/Z7000/FH7000の3シリーズです。

また、同時に発表されたVARDIAシリーズは、MPEG-4 AVC/H.264トランスコーダーを高性能化し、フルHDでの7倍録画に対応したモデルです。こちらにも、スケーリング処理を行ったあとで、エッジの強調やノイズ処理などを行うXDEと呼ばれる高精細技術が採用されています。

また、2009年に注目の製品については、「高画質化をさらに進めると同時に、ネットワークやストレージといった、REGZA/VARDIAの特徴となっている部分に注力した製品をリリースしていきます」とのことです。

続いて家電分野ですが、こちらは「3月に発売した、静かなクリーナー『クワイエ』が、反響も大きく、一番印象に残っています」とのことです。クワイエシリーズの特徴となっている清音性は、スプリングで宙に浮かした状態のモーターをフルカバーし、そのカバーとボディの間にもサスペンションを挿入するという防振構造、さらに排気風路を吸音材でフルカバーするといった防音構造を採用、これにより、49dBという低い動作音を実現しています。

また2009年の製品に関しては、「さらに静かでエコな製品を目指していきたい」とのことです。

レゾリューションプラスを搭載したREGZA「ZH7000」シリーズ

低騒音クリーナーの先駆けとなった「クワイエ」(VC-1000X)

三洋電機

続いて三洋電機です。同社も、AV機器、家電製品など幅広い分野の製品をリリースしています。まずはAV機器から聞いてみたところ「Xactiの防水モデルが、反響も大きく印象深い製品です」とのことでした。同シリーズは、SDメモリーカードに、映像を記録するMPEG-4ムービー。最近のモデルでは、MPEG-4 AVC/H.254方式にも対応しており、より高圧縮/高画質かが計られています。防水モデルは「DMX-CA8」。単なる防水というのではなく、水深1.5mまでの水中撮影が可能というモデルです。もちろん、ムービーだけではなく、800万画素での静止画撮影も可能です。

続いて家電製品ですが、こちらは「印象に残ったのは、eneloop bikeです。問い合わせの件数が非常に多い製品です。12月に行われたエコプロダクツ2008にも出展させていただきました。ただ、eneloop bikeの発売は2009年1月なので、2008年の製品ということでしたら、『おどり炊き』シリーズの圧力ジャー炊飯器でしょう。ハイエンドの炊飯器としては、非常に販売数も多く、おかげさまで、量販店などでは予約をいただいてからお届けするまで、3週間待ち、というような状況にもなりました」とのことです。

eneloop bikeは12月1日に発表された製品で、道交法の改正により、人力とパワーアシストの比率が1:2まで許可されたことに合わせた製品。従来よりも、よりパワフルな走りが可能です。また、同社の電動ハイブリッド自転車は回生ブレーキの装備など、省エネ性能の高さも大きな特徴となっています。

また、おどり炊きシリーズの「ECJ-XP1000」は、純度99.9%の銅を内釜の素材とする「匠純銅」内釜を採用する製品。また、同社が特許を持つ可変圧力炊飯を、炊飯時だけでなく給水や蒸らしの段階にも採用することで、より炊きムラの少ない炊飯を可能にするという製品です。

2009年の注目点については「来年も、環境エナジー先進メーカーとして製品を開発していきます」とのことでした。

水中撮影も可能な防水Xacti「DMX-CA8」

新基準に対応した電動ハイブリッド自転車「eneloop bike」

純度99%の「匠純銅」内釜を採用する「ECJ-XP1000」

三菱電機

次は三菱電機です。まずは家電製品ですが、同社広報では「瞬冷凍とエコの見える化が、2008年に印象の強い製品、というよりも技術です」とのこと。「8月に発表した『熱いまま急っと瞬冷凍』シリーズの冷蔵庫では、炊き立てのご飯をそのまま冷凍できるのはもちろんですが、食材の食感を損なわずに冷凍するというのも大きな特徴です。これには、過冷却という、凍結する温度よりも低い温度に下げたものに、なんらかの衝撃を与えると、全体が一気に凍るという原理を使用しています。一般的な冷凍では、食材は、その周囲から凍っていきますが、瞬冷凍では、全体が一気に凍ります。そのため、食材の細胞の破壊を押さえることが可能となっているわけです。瞬冷凍での温度は-7°C前後。一般的な冷凍に比べて長期間の保存には向きませんが、2〜3週間は、凍らせる前と変わらない食感を楽しむことができます。冷凍庫の新しい提案というわけです。また、9月に発表した『霧ケ峰 ZWシリーズ ムーブアイFit』が採用している、こちらも新しい提案ですが、それが『エコの見える化』です。上級クラスのエアコンでは、省エネ性能が高いのは、もはや当たりまえです。新しい『霧ケ峰ZWシリーズ ムーブアイFit』では、それだけでなく、実際どのくらいのエネルギーを使用しているのか? CO2の排出量は? 電気代は? といったことが、室内機の右下の液晶パネルに表示されます。もちろん、ムーブアイの機能によって節約された電気代も表示可能されます。この表示によって、使う人の省エネ意識を高めるというのが『エコの見える化』です」とのことでした。

さらに、2009年の注目製品についても聞いてみたところ「12月に発表した『蒸気レスIH』が注目の製品です」とのこと。「ここ数年、高級炊飯器の分野では、内釜の素材など、おいしくするための機能の掘り下げが行われてきました。『蒸気レスIH』は、おいしいだけでなく、部屋の中に蒸気を出さないという特徴を持った炊飯器です。炊飯器の回りは、湿気による汚れが目立つという声が多く、それを解消するために搭載したものです。炊飯時に出る水蒸気を、本体内部に回収するシステムが新たに採用されています。もちろん、新システムの搭載だけではなく、味の方も手抜きはしていません」とのことで、こちらも同社らしい、新しい方向性を示すものだといえるでしょう。

続いてAV機器です。こちらは「薄型セパレートタイプのフルHD TV『LCD-46LF2000』と、BDレコーダー『DVR-BF2000』です」とのこと。LCD-46LF2000は、ディスプレイ部分のレイアウトフリーだけでなく、無線接続されるキュービックスタイルのレシーバー、そしてそのレシーバーにデザインが合わせられたBDレコーダー「DVR-BF2000」など、インテリア性の高い製品です。さらに、デザインだけでなく、ダイヤモンドパネルや各色リアル16bit処理を行う「DIAMOAN Engine PRO III」などを搭載するなど、超薄型TVでありながら、MZW200シリーズと同レベルの高性能を備えています。

なお、製品発表時には、レコーダーDVR-BF2000は、最大4倍録画まで可能、となっていましたが、実際の製品版では、同社のBDレコーダーの新モデル「DVR-BZ210」と同様に、最大5倍録画にまで対応しているとのことです。

2009年の製品については「ハイライト再生を特徴とするBDレコーダー、ダイヤモンドパネルを搭載した液晶TV、大型TVでは唯一のオートターン機能など、独自の技術/機能を活かしたモデルを展開していきたい」とのことです。

食材の食感も保つ冷凍を実現した「熱いまま"急っと"瞬冷凍」シリーズ

エコの見える化を実現する「霧ケ峰 ZWシリーズ ムーブアイFit」

スタイルだけでなく性能も追求した「LCD-46LF2000」「DVR-BF2000」

日立製作所

続いて、日立製作所です。AV機器に関しては「UT XP770シリーズがもっとも印象に残る製品です」とのことです。超薄型TVは、2007年の暮れに同社が発表した「UT-32HV700」が、世界初の市販モデルですが、2008年には、ラインナップも32V型から47V型まで広がり、さらに4月には、ネット対応や内蔵HDDの採用など、機能をアップしたXP770シリーズも発表されています。UT XV/HV700は、iVDRでの録画には対応していましたが、内蔵HDDがプラスされたことで、普段は内蔵HDDで録画して、iVDRにライブラリを作成といったようなことも可能になっています。

2009年については「UT700で始まった薄さ何cm、あるいはレイアウトフリーという方向だけでなく、その一部はXPにもすでに含まれているのですが、薄型化したことによる省資源化や、省エネに対するアプローチもさらに進めていきたいと考えています」とのことでした。

家電製品については「一番印象に残っている製品といえば、10月に発売した『ビッグドラム』です。ヒートポンプを使っていないのに、洗濯から乾燥までの消費電力量が1000Whを切るということで、非常に大きな反響がありました」。とのことです。

第3世代となる「ビッグドラム」(「BD-V3100」「BD-V2100」)は、乾燥の際の熱源にヒーターを使用するドラム型洗濯乾燥機です。しかし、ヒーター、そして本体のモーターなどから発生する熱を蓄えて再利用する「ヒートリサイクル乾燥」を採用することで、ヒートポンプ式に負けない省エネ性能を実現したモデルです。また、大口径ドラムによる脱水能力の高さから、除湿に使用する水の量も減少。標準コースで使用する水の量も、先代モデルの95Lから58Lへと削減されています。

2009年の製品に関しては「技術面での革新を引き続き行って、お客様から『こういう製品がほしかった』といわれるようなものを発売していきたい」とのことです。来年も期待できそうです。また、製品のラインナップについては「2008年までは、フル機能を備えた高級モデルが中心となっていましたが、2009年は、便利な機能は搭載していても、必要なものにしぼったミドルクラスの製品も充実させていきたい」とのことでした。

内蔵HDD+iVDRに録画も可能な超薄型TV「UT XP770」シリーズ

ヒーター方式で消費電力量1000Whを切った、驚きの「ビッグドラム」

ソニー

続いてソニーの広報です。新技術をふんだんに盛り込んできたBRAVIAや、BDレコーダー、専用アクセサリーのライセンスプログラム「Designed for Walkman」を開始したなど、話題性の高い製品が多い同社ですが「どれもこれも印象深かったので、なかなか難しいのですが、AV機器では、新しいBRAVIAとBDレコーダー、そして、BDレコーダーとマルチチャンネルインテグレーテッドアンプなどが印象深い製品です。とくに3機種発表されたマルチチャンネルインテグレーテッドアンプは、エントリーモデルの「STR-DG820」でも、昨年のTA-DA5300ESに搭載されていたのと同じ高帯域パワーアンプや、第2世代の低ジッタ型ロスレスデコードエンジンを搭載するなど、クラスを越えた性能に仕上がっています。9月に発表したBDプレーヤー「BDP-S350」「BDP-S5000ES」などと合わせて、高品位なシアター/リスニング環境を楽しめます。また、ポータブル機器では、専用のスピーカーが付属したモデルなど、新しい展開を始めたWALKMANシリーズが、印象に残っている製品です」とのことでした。

エントリーモデルのマルチチャンネルインテグレーテッドアンプ「STR-DG820」

家でも外でも快適に使える、専用スピーカー付きのWALKMAN「NW-S630FK」シリーズ

パナソニック

パナソニックでは、他社とは若干異なる回答をいただきました。「薄型TVやBDの普及といった話は、あまりにも当たり前です。あくまでも個人的な意見ですが、2008年に印象的だったのは、宅内ネットワークの普及です。2008年に発売されたTVやレコーダーなどのAV機器は、その多くがネットワークでの接続を前提にしていました。それ以前はSDメモリーカードや、DVDディスクといったメディアでの連携が中心でしたが、それがネットワークで接続されることで、アクトビラを初めとするオンデマンドサービスや、DLNAによるサービスなどが利用可能になっているわけです。弊社でもHD PLCなどの製品を販売していますが、家庭内でPC関係だけでなく、AV機器、そして白物家電までを含んだネットワーク化がスタートしたのが、2008年だったという印象です」とのことです。また「これらのネットワークによるサービスが本格的に普及するのは2009年からでしょう」とのことでした。

手軽に宅内ネットワークを実現するHHD PLCアダプター「BL-PA510KT」

シャープ

シャープの広報では、家電で「印象に残った商品は、プラズマクラスターイオン発生機『IG-A100』です。部屋に浮遊するカビ菌、ウイルス、アレル物質を分解・除去する効果があり、10月10日の発売以来、大変好調に推移しており、当初計画の月産2万台から、11月は3万台、12月は5万台と当初の計画を大きく上回っております。特に、1台購入されたお客様が、追加で2台3台とお買い求めになるリピーター現象が起きており、商品の効果を実感いただけている証だと考えております。このプラズマクラスター技術は、弊社独自の空中除菌技術で、空気清浄機やエアコン、冷蔵庫、ドラム式洗濯乾燥機、掃除機などにも搭載しております」とのことです。「IG-A100」の発表当時に聞いた話では、IG-A100に採用されているプラズマクラスターイオン発生デバイスは、従来より同社の空気清浄器などに採用されている除菌イオンユニットをさらに強化したものだとのことです。また、IG-A100にはプラズマクラスターイオン発生デバイスが4基搭載されており、約6畳の広さに高濃度のイオンを行きわたらせることで、部屋の空気だけでなく壁や衣類に染みついた臭いなども分解するということでした。

また、AV機器に関しては「ブルーレイディスクレコーダーを内蔵した液晶テレビAQUOSのDXシリーズです。弊社が得意とする『液晶パネル』、『青紫半導体レーザー』の2つの基幹技術を応用した独自特長商品です。11月20日の発売以来好調に推移し、12月上旬には当社液晶TVの中で15%を占めるまでになり、録画再生できる薄型テレビとして新しいカテゴリーを確立しました。省スペース、配線が不要、簡単操作といった点が支持されており、特に若い女性、年配層から評価いただいております」とのことで、どちらも、同社らしい製品が選ばれているといったところでしょう。

DXシリーズは、BDレコーダーを組み込んだ液晶AQUOSで、52V型から26V型までがラインナップ(37V型以上がフルHDパネルを搭載)。HDDは内蔵されていませんが、MPEG-4 AVC/H.264トランスコーダーの採用によって、BDへの5倍録画が可能。同社のテレビはデジタルシングルチューナーを搭載している製品が多いのですがこのDXシリーズは、Wチューナーを搭載。番組を試聴中に、別の番組の録画を行うことも可能という、手軽さを追求したモデルです。

写真ではわかりにくいが、デスクに置くスタンドぐらいのサイズしかない「IG-A100」。このサイズで6畳程度の空間を浄化可能だ

現代版のテレビデオ「DX」シリーズ。配線なども含めて手軽に使えるところがポイント

まとめ

このように見ていくと、2008年はなかなか魅力的な製品が発売された年だったと思えます。皆さんも、思わず「○○を衝動買いしてしまった」というようなことがあったのではないでしょうか。もちろん筆者もです。

AV機器に関しては、北京オリンピック前までの、各社の大型TVラインナップの充実、その後のBDレコーダーの大躍進、それにあわせてBDのサウンドフォーマットにフル対応したAVアンプの充実、そして、毎週のように発売されるポータブルオーディオプレーヤー関連機器といったところが目に付くところでした。

家電製品では、一昨年は、多くの分野で高機能な(高価格な)モデルに注目が集まりました。2008年も前半はその傾向が続いたのですが、景気後退が鮮明となった秋口以降は、単に高機能というだけでなく、経済性の高さや環境に対する負荷の低さの注目度が高くなってきたようです。

また、全体的には、とくに10月以降、各社とも、あまり多くの新製品が出ていないのが気になるところです。これから始まる2009年に期待したいところですが、一体どうなるのでしょうか。できれば、おもしろい製品が数多く発表されるとよいのですが。