財団法人カシオ科学振興財団は5日、有意義な研究43件に対して総額5300万円の助成金贈呈を決定、カシオ計算機の本社にて贈呈式を開催した。

カシオ科学振興財団は、日本における学術研究の発展と振興に貢献するため、1982年に設立された財団だ。「特に萌芽的な段階にある先駆的かつ独創的研究を助成すること」を主眼に、自然科学分野および人文科学分野の研究に対して1983年より毎年助成活動を行っている。

第26回を迎えた今年は基本テーマのほかに、自然科学部門で「小型化・低消費電力化に関連する要素技術研究」および「健康維持・増進のための電子装置に関する研究」、人文科学部門で「IT社会における人間の知的進歩に関する研究」という3つの特別テーマが用意された。

応募数は69大学185件で、内訳は自然科学部門が165件、人文科学部門が20件。この中から15名の選考委員による厳正な審査で、43件(自然科学部門38件、人文科学部門5件)に対して総額5300万円の研究助成金を決定した。これにより、第1回から第26回までの助成金総額は12億2939万7000円、助成対象は972件となる。

助成金受領者、財団役員、来賓が一堂に集った贈呈式会場

カシオ科学振興財団 理事長(カシオ計算機 代表取締役副社長)の樫尾幸雄氏

カシオ科学振興財団 理事長であり、カシオ計算機の代表取締役副社長も務める樫尾幸雄氏は「まだカシオ計算機を創立する前、私たち樫尾四兄弟がリレーを使った計算機の開発に取り組んでいた頃は、開発資金の調達に大変苦労しました。そこで今後の日本を背負う若い研究者のために、少しでもお役に立てればという願いからカシオ科学振興財団を設立しました」と、財団設立の経緯を語る。さらに「今年は過去最多となる185件のご応募をいただきました」と、これまで以上に多くの研究者から応募があったことに喜びの表情を浮かべた。

選考委員会では「研究テーマや研究方法が独創的であるか」「研究目標が妥当であるか」「研究実施計画の精度は高いか」をポイントとして選考が行われた。また、期待される研究の成果に関しては「学術的」「社会的」「次の段階への発展性」などで判断。資金に関しては「使途計画の妥当性」および「助成の必要度」が基準になっている。ちなみに今回の助成件数および金額は42件5200万円を予定していたが、応募数の多さから選考時点で5300万円まで拡大されたという。

各研究テーマ1件あたりの助成金額は100万円で、特別テーマに対しては300万円。原則として研究期間1年間に使用する範囲で助成するが、研究内容によっては最高3年間までの継続が認められる。また、必ずしも受領年度内に使い切る必要はない。樫尾氏は「貴重な研究の成果が実るように心からお祈りしています」と、助成対象に選ばれた各研究者への熱いエールを送った。

助成を受ける研究者および研究テーマの紹介が行われた後、各部門の代表者2名に対して研究助成状が授与された。代表者を務めたのは、自然科学部門代表が北海道大学 量子集積エレクトロニクス研究センター 教授の橋詰保氏で、人文科学部門代表が東京農工大学 教育センター 准教授の加藤由香里氏。両名ともに研究助成状を受け取った後で樫尾氏と固い握手を交わし、助成への感謝と研究の成功に対する強い想いを伝えた。

研究助成状を受け取った後で固い握手を交わす樫尾氏と橋詰氏