Yahoo! JAPANを運営するヤフーは27日、小学館の百科事典「日本大百科全書(ニッポニカ)」のコンテンツを収録したオンライン百科事典サービス『Yahoo!百科事典』の提供を開始。同日発表会を行った。同サービスでは『日本大百科全書』の見出し約13万項目、キーワード約50万語を収録。プロの手で編纂された百科事典を完全無料で公開するサービスは国内初だという。

無料の百科事典サービス「Yahoo!百科事典」の提供を開始

ヤフー取締役最高執行責任者 喜多埜裕明氏

ヤフーではこれまでも辞書、コミック、雑誌などで小学館とコラボレーションを行ってきた。同社の喜多埜氏は、今回新たに百科事典のサービスを開始するにあたり「ヤフーとしても喜ばしく、ユーザーにとっても有益なことではないかと思う」と述べた。また、Yahoo!百科事典のコンテンツは、百科事典単体としてだけでなく、Yahoo!検索にも連動する形となっており「検索結果のページにも自然な形で入れ込むことを予定している」(同氏)とした。今後は「Yahoo!キッズ」「Yahoo!ニュース」などとミックスさせることでユーザーにさらなる利便性を提供し、「次世代のオンライン百科事典として成長させていきます」と展望を示した。

これまでも辞書、コミック等のコンテンツを小学館が提供

百科事典の項目とYahoo!検索が連動

小学館専務取締役 中村滋氏

小学館の中村氏は、1962年に初めて同社からの百科事典が刊行され、その後70年代にかけて「ベストセラーはずっと百科事典。世帯普及率は20%と言われた」と、百科事典が同社の土台を築いてきた歴史を振り返った。同社では早くから百科事典のデジタル化に取り組んでおり、インターネットでもすでに百科事典のコンテンツを提供している。しかしこれは有料サービスで、主要大学・図書館・研究所等で利用されているとのことだが、無料でできるものは今回のサービスが初めてとなる。中村氏は新しい百科事典サービスについて「一家に1セットだった百科事典を、これからは一人ひとりが持つ時代になるのでは」と述べた。

無料のサービスが登場することで、同社が販売する百科事典との競合が生じる可能性が高いが、この点について小学館の森田氏は「多くの人に使ってもらうことがニッポニカの一番の願い」という。小学館ではこれまでも「Yahoo!辞書」に「大辞泉」「プログレッシブ」という辞書のコンテンツを提供しているが、「これによって紙媒体の価値が下がったとは考えてない」とし、多くの人が利用することによってコンテンツの中身が鍛えられること、またブランド価値向上やこれからの利用の広がりに期待感を示した。

小学館コミュニケーション編集局プロデューサー 森田康夫氏

ヤフー検索事業部 一戸美穂氏

続いてヤフー検索事業部の一戸氏が、サービス内容の説明と実際のサイトを使ったデモを行った。同社が事前に行ったオンライン百科事典の利用意向についての調査では、「利用したい(46%)」と「やや利用したい(41%)」合わせて8割超が利用に積極的な意志を示す結果となった。

特に20代および50代以上で利用の意向が高いという

「プロ」による「無料」の百科事典はこれまでにない位置付け

これまでも「プロ」が編纂したものを「有料」で、あるいは「ユーザー」が編纂したものを「無料」で提供する百科事典サービスは存在していたが、一戸氏は「同サービスの特徴は『プロ』が編纂した内容を『無料』で提供するという点」であると強調した。

文中の語や関連語もすぐに参照できる

トップページには検索窓、分野一覧のほか、日替わりのトピックも掲載

同サービスでは項目数、解説量ともに日本最大となる『日本大百科全書』の内容を、自然科学、医学・薬学、歴史、文学、社会、産業など16の分野にわたって掲載。必然的に文字数の多いコンテンツとなるため「表示速度、読みやすさにこだわって」(同氏)開発されたという。文章だけでなく、画像、音声、動画といったマルチメディアコンテンツも数多く収録。また、略語での検索や、タイプミスに対して正しいと思われる語をサジェスチョンするなどのサポート機能も搭載している。

"UK"で検索すると"イギリス"の項目を表示する気の利いた機能も

「ドップラー効果」の項目では動画で仕組みと実際の音声を再現

同サービスに収録されている内容はYahoo!検索とも連携しており、通常のYahoo!検索を使った検索結果に百科事典の項目が表示される。「○○について知りたい」というニーズに対して、Web検索から百科事典の解説を読めるというソリューションとなる。

検索結果に「Yahoo!百科事典」の見出し項目が表示される

検索結果の"情報の信頼性"を高めることにつながる

一戸氏は「Yahoo!百科事典はYahoo!検索の質の向上に貢献する」とし、さらに今後は検索だけでなくニュースやランキングなど他のサービスとも連携、「Yahoo! JAPANの知識の基盤となる」ことを目指すという。また、「小学館の編集力とYahoo! JAPANユーザーの知識を取り込むことで、新しい形の"集合知"を築きたい」と今後の展開についての考えを示した。