撮影旅行というと、写真を撮りにいく旅のこと。良い写真をたくさん撮ることが目的だと考えがちだ。ところが、小泉さんは「そうではない」と断言する。「撮影旅行で一番大切なものは、写真ではなく、元気に旅行を楽しむことなんです」というのだ。いったいそれはなぜだろう。

フランス・パリのノートルダム大聖堂を背景に入れた1枚。このように旅行の先に"被写体"があるのが「撮影旅行」なのだ

たとえば、ヨーロッパの街の夜景が撮りたいと、毎晩夜遅くまで撮影している人がいた。ヨーロッパの夏は、夜の訪れが遅い。連夜の寝不足がたたって、とうとう旅先で病気になってしまった。「これでは、元も子もありません。健康だからこそ、身も心も活き活きとして、いつまでも写真を楽しめるのです」と、小泉さんは考える。だから、写真より健康のほうが大切なのだ。

写真を撮ることばかりに精を出して、せっかく遠い外国まで来ていながら、他のことにまったく興味を持たない人もいると、小泉さんは残念がる。「夜は危険なんていいますが、せっかくなのでホテルのバーにでも行き、語らい、ダンスのひとつも踊る。そうしたコミュニケーションや文化活動こそが心を豊かにして、さらに良い写真を生み出すのです」というのだ。「写真はきっかけ。世界遺産を巡ったり、写真に収めるすることよりも豊かな心を育むことが大事だと私は思います」と、小泉さんはいう。「良い旅をすれば、きっと良い写真が残るはずです」。この言葉こそ、小泉さんが最後に教えてくれた撮影旅行の究極の極意だ。

小泉澄夫(こいずみ すみお)

東京生まれ。日本写真芸術学会会員、世界写真フォーラム主宰。「日本人の心」をテーマに風景写真を30年以上撮り続けている。1998年より、世界遺産の制度主旨に賛同し、各地の世界遺産を取材。『世界遺産 ビジュアルハンドブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)をはじめ、雑誌等で世界遺産の訴求に努める。2000年11月、フランス・パリで個展『日本人の心』を開催。マイコミジャーナル主催「That's撮れ録れフォトコンテスト」第4回の特別審査員。
作品募集中! That's撮れ録れフォトコンテスト 第4回

いつまでも残しておきたいもの「旅(情景・乗り物)」締め切り間近!

That's撮れ録れフォトコンテスト

That's撮れ録れフォトコンテストは"いつまでも残しておきたいもの"を共通テーマにした、オリジナルの写真によるコンテストです。感動のシーンから忘れられない思い出、衝撃の瞬間をとらえた写真など、各回のテーマに沿ったオリジナルの作品をどしどしご応募ください。応募者には、もれなくThat's写真保存用DVD-Rをプレゼント! 安心のカメラライフのために、長期保存に適したThat'sのDVD-Rをご活用ください。
応募は11月30日(日)までです。とっておきの写真(ただし、未発表に限る)をお待ちしております。