ガートナー ジャパンは10月27 - 29日、ITシンポジウム「Gartner Symposium / ITxpo」を開催。オープニングに先立って開かれた記者説明会では、ガートナー リサーチ バイスプレジデント 兼 フェローのマーク・ラスキーノ氏が「2009年のTOP10戦略的テクノロジおよびハイプサイクルの戦略的活用」と題する講演を行い、今後3年間に注目すべき10のテクノロジーと、テクノロジーを適切なタイミングで導入するためのノウハウ「ハイプサイクル」を紹介した。

ガートナー リサーチ プレジデント 兼 フェロー マーク・ラスキーノ氏

戦略的テクノロジーは、「今後3年間の中長期戦略において、企業が大きな影響を受ける可能性を持つテクノロジー」で、2009年版は、米国オークランドで10月12 - 16日に開催された同シンポジウムで発表されたもの。10のテクノロジーの内容は、次のとおり。

1. 仮想化 (Virtualizaiton)

2. クラウド・コンピューティング (Cloud Computing)

3. サーバ:ブレードを超えたもの (Servers: Beyond Blades)

4. Web指向アーキテクチャ (Web-Oriented Architecutures)

5. エンタープライズ・マッシュアップ (Enterprise Mashups)

6. 特化型システム (Specialized Systems)

7. ソーシャル・ソフトウェアとソーシャル・ネットワーキング (Social Software and Social Networking)

8. ユニファイド・コミュニケーション (Unified Communications)

9. ビジネス・インテリジェンス (Business Intelligence)

10. グリーンIT (Green IT)

2009年版ではクラウド・コンピューティングとビジネス・インテリジェンスが加わった

2008年でトップに挙げられたグリーンITは、2009年は10番目にランク

同社が昨年発表した2008年版のテクノロジーは、1 - 10がそれぞれ、グリーンIT、ユニファイド・コミュニケーション、ビジネス・プロセス・モデリング、メタデータ管理、仮想化2.0、マッシュアップとコンポジット・アプリケーション、Webプラットフォーム/Web指向アーキテクチャ、コンピューティング・ファブリック、リアル・ワールドWeb (現実世界のWeb)、ソーシャル・ソフトウェアとなっていた。

2008年版からの変遷としては、グリーンITが1位から10位に、仮想化が5位から1位になり、また、あたらにクラウド・コンピューティングとビジネス・インテリジェンスが加わった。今年3位のサーバ:ブレードを超えたものは、昨年8位のコンピューティング・ファブリックと同義であり、「複数のブレードを1つのファブリック上で統合し、これらのブレードのコンポーネントが集まった大規模な1つのシステムのようなイメージで機能させるためのテクノロジー」という。

また、特化型システムは、アプライアンスのように、特定の目的のために構成されるシステムのことで、具体例として、ネットワーク・ルーティング・タスクに特化したシスコのルータ、グーグルの検索アプライアンス、ネティーザのデータウェアハウス・アプライアンス、EDA向け加速クラスタ、HPCシステムなどを挙げている。

そのうえで、ラスキーノ氏は、CIOやIT部門担当者がすみやかにとるべきアクション・プランとして、仮想化とグリーンITに集中し、コスト削減と柔軟性向上を図ることや、BIやCPM(企業パフォーマンス管理)イニシアブを実施し、リアルタイムな意思決定を可能にすること、ソーシャル・ソフトウェアの利用を評価し、顧客インタラクションを変革することなどを提言した。

テクノロジーのライフサイクルを5段階で表した「ハイプ・サイクル」

グリーンIT、クラウド・コンピューティング、ソーシャル・コンピューティング・プラットフォームなどは今後、生産性の安定期に入るという

同氏はまた、こうしたテクノロジーを企業で活用するためのノウハウとして「ハイプ・サイクル」を紹介。ハイプ・サイクルは、テクノロジーのライフサイクルを5段階(テクノロジーの黎明期、過度な期待のピーク期、幻滅期、啓蒙活動期、生産性の安定期の5段階)で分類したもので、「市場に新しく登場したテクノロジーやアプリケーションは、まず過度にもてはやされ(=ハイプ)、そうした熱狂が冷める時期を経て、最終的に市場における意義や役割が理解されるようになる。ハイプサイクルはその典型的な経過を示したもの」という。

例えば、現在、Web 2.0は「幻滅期」にあり、SOAは「啓蒙活動期」にある。また、クラウド・コンピューティングは、「黎明期」を出る段階にあり、グリーンITは「過度な期待のピーク期」を迎えている。これらの分類をもとに、ガートナーでは、今後2 - 5年の間に生産性の安定期に入ることが予想されるテクノロジー / トレンドとして、グリーンIT、クラウド・コンピューティング、ソーシャル・コンピューティング・プラットフォーム、ビデオ・プレゼンス、マイクロブロギングなどを挙げている。ラスキーノ氏は、「先進テクノロジーをハイプ・サイクルとして把握しておくことで、どのテクノロジーをいつ導入するべきかの判断を行いやすくなる」とアピールした。