日本テレワーク協会が主催する「第9回テレワーク推進賞」の授賞式が9月18日に都内で行われた。テレワーク推進賞は、テレワークの普及促進を目的に、テレワークを自ら実践している企業/団体だけでなく、テレワークを活用して事業を推進している企業/団体、SOHOや自営型テレワーカー等を支援している企業・団体を表彰する、2000年から実施されている制度。9回目となる今回は、2008年6月20日から7月31日の間に審査対象となる企業・団体のエントリーを受け付け、8月27日に行われた審査委員会で21企業/団体の入賞者が決定した。また、今回からエントリー事例を「働き方の多様化」「ワークライフバランス」「エージェント機能」「障害者支援」「地域活性化」「ツール開発」の6部門に分けて審査。その結果、「働き方の多様化」部門から3件、「障害者支援」から1件の計4社が優秀賞に選定された。

「第9回テレワーク推進賞」の全受賞者代表

表彰式では、日本テレワーク協会会長の青木利晴氏が冒頭で開会にあたって挨拶。「例年に比べて応募数はかなり多く、広い分野からの応募があった。テレワーク推進は裾野の広がりを見せてきている証拠だ」と語った。また、来賓として出席した経済産業省 商務情報政策局 サービス政策課企画官の稲垣克芳氏は「テレワークは政府が推進する"ワークライフバランス"においても有効な手段として重要な位置づけにある。7月に内閣府が策定した"ワークライフバランス憲章"でも多様な働き方の選択肢として、テレワークが挙げられている。今後も厚生労働省の"在宅勤務ガイドライン"の改定をはじめ、テレワーク普及のための環境の整備も進んでいくはず。経済産業省では"地域の活性化"の視点からテレワークに注力し、2009年度は予算を倍額にし、普及推進に拍車をかける。来年はできれば自分自身もテレワークを実践したい」と、政府関係者を代表して挨拶を行った。

日本テレワーク協会 青木会長

経済産業省 商務情報政策局 サービス政策課 稲垣克芳企画官

東京工業大学大学院 比嘉邦彦教授

続いて、審査員を代表して、東京工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科の技術経営専攻教授の比嘉邦彦氏が祭壇。今回の審査について「例年以上に応募数が多く、テレワークが実践の時代に来ていることを実感した。また、多種多様な業界や取り組みが広がり、楽しみである反面、ほかにはないインパクトを持つ斬新な例は少なかった」と、最高賞にあたる会長賞が今回該当なしとなった理由を説明したほか、「あと1、2年後には会長賞を取ると感じる事例はあった」と今後への期待を述べた。

今回優秀賞を受賞したのは、沖ワークウェル、オリックス、富士通ワイエフシー、見果てぬ夢の4社。沖ワークウェルは、2004年4月から障害者在宅勤務システムを開発/実践し、テレワークでの勤務を前提とした障害者の採用を行っている企業。テレワークを活用した障害者支援のパイオニア的企業としての評価を受け、今回の受賞に至った。また、残りの3社はいずれも「働き方の多様化」部門での受賞で、オリックスは非IT企業でありながらテレワークを導入し、「ドロップインオフィス」「ホームオフィス」「モバイルオフィス」などの独自の就業形態を設けた工夫、富士通ワイエフシーはワークライフバランス支援策としてテレワークを導入し、家族の理解を得るために社長直筆の手紙を送るなどの取り組み姿勢、見果てぬ夢はテレワークで地方で勤務するスタッフに対しても、給与面で地域間格差をつけない企業としての斬新さが、それぞれおもな受賞ポイントして挙げられている。

一方、奨励賞は「働き方の多様化」部門5社、「ワークライフバランス」部門4社/団体、「エージェント機能」2社、「障がい者支援」1社、「地域活性化」3社/団体、「ツール開発」2社の民間企業14社、自治体3団体が受賞。知事の選挙公約に基づき、自治体職員への在宅勤務を都道府県レベルで本格的に取り組んでいる佐賀県庁や、素材メーカーとしてテレワークに挑戦した帝人、通常は週1、もしくは月2、3回の利用が多い在宅勤務を週3日以上で導入している日本ユニシス、在宅勤務の運用制度の構築と規定を正式に制定し、全社レベルでの導入を行う日立システムアンドサービス、テレワークによる常時在宅勤務者の雇用を行う企業に対する支援金交付制度を実施している松山市役所などが選出された。

個人として表彰された湘南総合研究所 取締役 松岡温彦氏(右)

また、公募ではなく、日本テレワーク学会の推薦により、テレワークの推進に貢献した個人を表彰する「テレワーク学会特別賞」は、湘南総合研究所取締役で日本テレワーク学会の顧問も務める松岡温彦氏が受賞。テレワークの普及推進に長年携わるひとりとして松岡氏は「テレワークという考えが先にあるのではなく、仕事の時間と空間を自由にするひとつの方法と捉え、柔軟に考えて進めていくことが重要。皆がやっていく中で普及していくものであり、その過程で技術と思想を身につけ、自分のものにしていってほしい」と、受賞にあたっての挨拶の中でテレワークに対する持論を語った。