半導体ベンダの米Cypress Semiconductorは、同社の不揮発性SRAM「nvSRAM」とデジタル・アナログ混合8ビットマイコン「PSoC(Programmable System-on-Chip)」を1チップ上に統合した製品「PSoC NVファミリ」を発表した。3.3V品となる「CY8CN102B」がサンプル出荷中で、2008年第4四半期中の量産開始を予定している。

PSoCとnvSRAMを1チップ化した8ビットマイコン「PSoC NV」

従来のSRAMは電源が落ちるとデータは消えてしまうという欠点があった。nvSRAMは、SRAMの周囲にSONOS型の不揮発性メモリ(NVM:Non Volatile Vemory)を置く事で、電力低下時などのイベントでSRAMのデータをNVMに退避させ、データの消失を防ぐというもの。NVMの書き換え回数は20万回、データ保持期間は20年という。

日本サイプレス 本部長 マーケティング・応用技術の吉澤仁氏

PSoC NVは、従来のPSoCの機能はそのままに、新たにnvSRAMの機能を加えたもの。同社日本法人の本部長 マーケティング・応用技術の吉澤仁氏は、「MRAMやFeRAMなどの新たなメモリが登場してきているが、まだ信頼性の面などで不安がある。また速度についてもSRAMの方がまだ早い。nvSRAMはそうした意味での次世代に向けた解決策の1つとなる」とし、PSoC NVの製品化については「PSoCとnvSRAMを集積することに対しての要求が高かったため」とした。

現在、サンプル品として提供されているPSoC NVはPSoCとnvSRAMをスタックパッケージにより1チップ化したものだが、「2009年第1四半期にはシングルダイに集積した製品を第2世代品として提供できる計画」(同)としており、その際はプロセスのシュリンクによりチップサイズの肥大化を抑えるとしている。

PSoC NVに搭載されるnvSRAMの容量は64K/128K/256KBの3種類。現在はチップがスタックされているためPSoCのコア側としてはGPIO(General Purpose I/O)により管理するという形をとっているが、シングルダイ化により直接バス経由による制御に移行するようだ。

nvSRAMのほか、プログラム格納用の32KBのフラッシュメモリならびにプログラム実行用の2KBのSRAMを搭載している。その他の機能としては、24MHz動作のM8Cプロセッサ、12個のアナログブロック(8~14ビットまで選択可能なA/Dコンバータ、6~9ビットまで選択可能なD/Aコンバータなどに利用)、16個のデジタルブロック(8~32ビットのタイマ、カウンタ、PWMなどのほか、UARTなどに利用)などを内蔵している。

PSoC NVのブロックダイアグラム(緑の部分、上から3段目にnvSRAMが加わった。ちなみに「DIGITAL BLOCKS」と「ANALOG BLOCKS」を書き換えることで、仕様の変更が可能な点が通常のマイコンとは違うところとなっている)

同社では、「技術トレンドが読めなくなった現在では、出荷ギリギリまで仕様が定まりきらなかったり、より多くのデータを保持することによる解析の強化、データ量の増加を実現するためのセンサなどの微弱信号の増幅のための回路増によるコスト増などの課題があった」(同)とし、いつでもハードウェアの仕様変更が可能で、アナログ機能も持つPSoCと、書き換え回数が多く、データ格納量も多いnvSRAMを組み合わせた同製品は、従来、PSoCが活用されていた主な分野である民生機器以外のサーバや産業機器などの分野でも「グリーン化が求められる現在、細かく電源を制御することが求められており、そういった意味ではアナログの機能まで含んでいるPSoC NVが意味を持つようになり、システムの1部ないし全部の置き換えを狙える」(同)とする。

また、ソフトウェアのサポートとしてはPSoC用の統合開発環境「PSoC Designer」がPSoC NVに対応。基本機能として、nvSRAMに対するリード/ライト機能が追加されたほか、将来的にはどのようにSRAMにデータを書き込むのかというようなデータストラクチャ的な機能の追加も予定されている。

さらに、複数のアナログチャネルからデータのサンプリングとロギングを行うことが可能で、電源障害時に多機能GUIを使い、プラグアンドプレイインタフェースを通じてデータを取り出し、システム障害が発生する前のイベントを再構築することができる「PSoC NV Demonstration Kit」の提供を2008年10月より、PSoC NVデバイスの混合シグナルおよびデータロギング機能を実験するためのプラットフォーム「PSoC NV Evalution Kit」の提供を2008年11月より同社のオンラインストアで開始する。PSoC NV Evalution Kitには、温度センシングとファン制御アプリケーションのためのファンモジュール、PSoC Designerおよびサンプルプロジェクトが含まれている。

なお、現在、3.3V品がサンプル出荷中であるが、同社では5V品「CY8CNP102E」の開発も行っているとしている。