私の好きな本の中に『深い河』と言う本がある。遠藤周作著の『深い河(ディープリバー) 』(講談社、1,995円)は、登場人物が人生にひと区切りつけるためインドへ向かい、インドの人々だけでなくそれぞれの想いを受けとめ、流れ続けるガンジス河で答えを見つけ出す物語だ。私もぜひこの目でガンジス河を見てみたいと思い、インドの旅へ繰り出した。今回は、インドのガンジス河をレポートする。

ヒンドゥー教の聖地、バラナシ

ガンジス河は、インド北部の平原を北から南に向かって流れ、インドの東側の国バングラデシュまで続いている。インドの人々にはガンガーと呼ばれている。

ガンジス河

ヒンドゥー教の聖地であるバラナシへは、少々長い道のりだ。まず、成田から首都デリーへ飛行機で8.5時間。その後、デリーから国内線に乗り換え1時間10分、鉄道なら特急を使って、11時間でバラナシ(ワーナラシー)に着く。ちなみにインドへ入国の際、短期間の観光でもビザが必要となるので、日本で予め取得しておこう。

バラナシのガンジス河は、インド全人口の約80%を占めるヒンドゥー教徒が、一生に一度は訪れたいと願う聖地である。理由として、先ほど説明したようにガンジスはインドの北部を北から南へ流れているが、バラナシでは唯一、南から北に川が流れているのだ。下から上、つまり天に昇るイメージがあるため信者が集う地となったそうだ。そのためインド全土から毎年100万人もの人々が巡礼に訪れる。転生を信じるヒンドゥー教徒は、来世で幸せになるため、現世の罪を聖なる河、ガンジスで洗い流す目的で沐浴するのだ。

バラナシの空港から街の中心へ

バラナシの空港からホテルまでタクシーで、木立ちの間を抜け舗装されていない道を揺られながら中心へ向かう。様々な本の描写のように、林や田畑が目立つのんびりとした景色が次第に町らしくなり、オートリキシャという三輪バイクや自転車が増え、バラックのような店が見え始めた。と、思うと、ひときわ陥没が激しい道沿いに違和感たっぷりのホテルが現れた。ようやく、この辺りが新市街の中心だと分かる。中心とは言っても人々の生活がむき出しで、その暮らしぶりは決して豊かとは言えないこの街は、10年いやもっと以前とも、ほとんど変わらないままなのではないかと思えた。

ヤギや牛が街中の至る所にいる