利益率で海外アニメよりはるかに劣る国産アニメ

中国のアニメ産業は、いまだにしっかりとした産業チェーンを確立できていない。これは、業界での共通認識である。一般に信じられているところでは、作品をとりまく関連商品の多様さ、例えばDVDやCD、書籍、アパレル、各種キャラクターグッズなどの売り上げにより、アニメ産業が享受し得る利益は大きいはずだ。だが、このような市場の拡大構想があっても、市場自体を見誤ってしまったため、投資における失敗を招いてしまったケースもある。

一例を挙げてみよう。かつて一世を風靡した中国のほとんどの子どもが知っているナンバー1アニメ「藍猫」では、派生製品が6,600種類以上にも達した。だが、売上合計はたった20億元(約300億円)だった。

その主な原因は、ライセンスを付与する対象分野を文房具と児童アパレルに絞り、キャラクター市場の自律的発展を制約してしまったことにあった。産業チェーンが確立していないという中国アニメ産業の弱点は、とうとう、現在の国産アニメがすでに数量上では国内の市場シェアの半分を占めるに至ったのに、それに見合った市場価値を創出できていないという状況をもたらした。つまり、ビジネスとしての利益面で、海外アニメよりはるかに立ち遅れているという現象を生起させたのだった。

業界専門家はこうした状況に至った背景として、産業自体が立ち上がったばかりの段階にあり、市場がまだ健全ではないという原因を挙げている。また、中国の放送体制にも原因があると指摘している。

知財意識の低さが投資家の意欲下げる

中国はアニメ番組に対し、映画、ドラマと同じく審査許可制を実施している。即ち、まずプロジェクト立案、それから制作、許可証申請、最後に放送の許可という審査のプロセスが厳格に求められているのだ。

このため、「イメージとストーリーを設計した後、気の効いたビデオクリップを作って投資家に話を持ち込む」というような一部の海外アニメ企業の事業モデルは、国内のアニメ企業にとっては「夢のようなもの」なのである。

中国国内では、アニメ企業は市場のニーズに応じて製作した虎の子の作品を、市場を独占するテレビ局に低価格で売るしかなく、結局は派生グッズの開発・販売によってしか売上をアップさせることができない仕組みになっている。

このような環境の中で、国内アニメ企業の主要な収入源となるべき派生グッズの開発・販売が、ベンチャー投資家にとって「さわる勇気も出てこない」領域となったのは、「お金が知らないうちにどこかに持っていかれてしまう」からだ。

新しいアニメ作品が出るや、全国の玩具メーカーが何のライセンスも得ないうちに派生グッズを勝手に生産し始める。しかも多くのメーカーは、たとえライセンスを得たとしても、契約を締結した後、契約に定められた数量を大幅に越える派生グッズをひそかに生産し、荒稼ぎをしてしまうのだ。

一方、アニメ企業自身の著作権に対する態度も問題だ。多くの企業は、自社の著作権を守ることの重要性を意識していないので、著作権に関する防衛意識が薄い。そのため、キャラクター製品が発売されるや、たちまち市場に大量の海賊版が現れる。中国の国内アニメ市場における知的所有権保護に関する認識不足という現状は、国産アニメ市場に投資を呼び込む上で最大の障害になっている。