ArduinoとGainerの人気ぶりを見て自分でもプラットホームを設計してみたくなり、筆者が今回作成したのが「奏(かなで)」という名のプラットフォーム。

最大の特徴は、PCとプラットホーム間のデータリンクにシリアル通信を用いず、MIDIケーブルとMIDI信号で行っていることだ。MIDI信号でコントロールできるため、PC側でコントロールのためのプログラムを一切書く必要がないのが特徴であり、"売り"である。MIDIシーケンサやDAWを使って「フィジカルコンピューティング」を楽しめる上、コントロールする外部機器を音楽と同期させることもできる。

「MIDIでネギを振ることができる」というコンセプトで設計を始めた(図3)。

図3: 「サーボでネギを振ってみた MIDI編」

PC側にMIDIインタフェースが必要ではあるが、それさえあればPC側にドライバー類を追加でインストールするといった必要もなく扱いやすい。また、MIDIを利用しているため信号のチャンネルを選択して拾うことができる。このためディジーチェーン(図4)ができ、最大16枚の"かなで"をDAWから音楽に同期して同時にコントロールすることが可能となっている。

図4: スター接続とディジーチェーン接続のイメージ

ArduinoやGainerではPCから機器を制御するだけではなく、センサーをプラットホームにつなぎ、その情報をPCに読み込むことが可能であるが、"かなで"ではそういった外部からのData-INは省略しData-OUTに特化している。この点では他のプラットホームに劣っているけれども、そのデメリットを補うくらいの特徴がMIDI経由でのコントローラとして存在しているのはないかと考えている。

MIDI信号とマイコン工作の近さ

マイコン電子工作をやっていると、どのようにしてPCとマイコンをつなぐのかといった問題に頭を悩ませることになる。

ほとんどの場合は、ハードとソフト両方の簡単さからシリアル通信を利用することになるのだが、最近はシリアルポートが付いていないPCが多くなってきた。逆にUSBポートが付いていないPCはないので、USBシリアルコンバータケーブルを利用するか、Arduino DiecimilaやGainerのようにUSBシリアルコンバートチップを搭載するかしてシリアル接続を行うことになる。

ところで、MIDIケーブルで伝送されるMIDI信号もプロトコル上では31,250bpsのシリアル通信である。ボーレートさえ気を付ければ単純なシリアル通信なため、マイコンで送受するにはもってこいな形となっている。なので、マイコン電子工作とMIDI信号の組み合わせはイロイロと使えるのではないかと考えるところだ。PCからマイコンをコントロールするためのインタフェースとしたり、自作コントローラで電子楽器を演奏してみたりと遊べそうな気がする。

PC側には標準でDIN5ピンのMIDIポートが付いているわけではないが、DTMをやっている人の手元には対応機器の1つくらいはあるのではなかろうか。そうでなくても、USB-MIDIのコンバートケーブルは、USBシリアルコンバートケーブルとそう価格差もなく売られている。入手性の良さもあってお勧めしたい選択だ。DTMにも使えるし、ドライバーのインストールも必要ない場合が多い。なんといっても「COMポート何番だっけ?」と調べる必要がないのもうれしい。