日産自動車は18日、同社の燃料電池車「X-TRAIL FCV」の一般向け体験試乗会と、プレス向け水素充填デモンストレーションを行った。同社は16日~24日の日程で開催中の文化・芸術祭「軽井沢八月祭」に協賛しており、X-TRAIL FCVの最新モデル2台を音楽祭出演者の送迎用などとして提供している。一般向けの体験試乗運行は22日まで。

X-TRAIL FCV

ボンネットを開けたところ

トランクの床下にコンパクトリチウムイオンバッテリーが搭載されている

X-TRAIL FCVは、35MPaの高圧タンクに水素を搭載、空気中から取り込む酸素との化学反応により電気を取り出す燃料電池車だ。一般向け体験試乗運行には親子連れなど2組が参加した。運行の前には、停車した状態での燃料電池による発電デモンストレーションが行われ、発電にともなって水が排出される様子や、排気口から蒸気のみがふき出す様子が披露された。参加者からは、「静かで(走行中も)タイヤの音しかしなかった」「予想に反して、車体の重さを感じないスムーズな加速だった」と好評。また、「環境に優しいという安心感をもてるのがうれしい」と環境性能を評価するコメントもあった。

「お父さんの車よりいい!」と素直(!?)なキッズにお父さんは苦笑い

水素と酸素の化学反応で電気と水ができ、水は外部に排出する

排気口からは蒸気しか出ない

これに引き続き、プレス関係者を前に、移動式水素ステーションからX-TRAIL FCVへの水素充填が実演された。静電気除去のためのアースが取り付けられた後、充填口にノズルが差し込まれ、35MPaの高圧タンクに10分ほどかけて水素を充填。水素ステーションにはステーション側と車側の水素圧を表示する2つのメーターが付いており、両方が35MPaで一致したところでチャージ終了となる。満タンにした場合の航続距離は370km。タンク内の水素残圧は、インパネの燃料計に表示される。また、35MPaの充填口はすでに、サイズや形状が国際規格で統一されているという。

移動式水素ステーション

ノズルを差し込む

35MPaの充填口

左がステーション側、右が車側の水素圧

車側が35MPaに。これで満タン

液晶画面には、航続距離の残と走行時のエネルギー供給元(燃料電池/バッテリー)が表示される

セレクター部はノーマル車然としている

今回提供されているX-TRAIL FCVは2005年12月に発表されたモデルで、日本でナンバーを取得している計10台のうちの2台。日産自動車 燃料電池研究所 主任研究員 山梨文徳氏によれば、部品代(人件費などを含まない)だけで1台につき1億円近くのコストがかかっており、現在の技術では大量生産しても4~5,000万円はかかるという。「普及に向けた最大のハードルはコストです。2010年代の前半には1,000万円台、2015年以降に500万円程度を目標に低価格化を進める」と生産開始への青写真を描く。バルブやセンサーといった部品の数や、白金の使用量を低減することで低価格化を図るとのことだ。なお、同社は6日に体積あたりの出力を約2倍に改良し、白金の使用量を従来の半分に削減した燃料電池スタックを発表している。

また、燃料電池車のランニングコストについて山梨氏は、「ほぼ同じエネルギー量(ジュール)を持つガソリン4リットルと水素1kgで比較した場合、現在のところ水素はガソリンの約3~5倍の価格。主に運搬に多大なコストがかかります。ガソリンと同程度にするために、『水素ステーションで水素を生産する』『工場で大量生産して運ぶ』など、いくつかの生産・運搬・貯蔵方法について調査が行われています。」と語る。燃費は、ガソリン換算でリッター約30kmと高効率のため、燃料の単価が下がればコストメリットが出てくるというわけだ。

さらに山梨氏は、電気自動車との住み分けについて「航続距離150km~200km以上なら燃料電池車。それ以下のいわゆる"街乗り"なら電気自動車が適しているのではないか」とコメント。「電池は重く、水素は軽い。現在の電気自動車は5~8時間の充電で航続距離150km~200km。これをのばそうとすると電池を積み増すしかなく、車体が重くなってエネルギー効率が落ちます。蓄電池が革新的に小型軽量化すれば燃料電池車はいらないが、現状では軽い水素で発電し、最大370km走る燃料電池車が長距離使用に向いている」という。

なお、気になる燃料電池車の環境性能だが、well to wheel - 井戸から車輪まで - でのCO2排出量はハイブリッド車と同程度なのだとか。「燃料電池車の場合、走行時(tank to wheel - タンクから車輪まで - )には一切CO2を排出しませんが、水素の生産に必要な電力をつくる際にCO2を排出する。これに対してハイブリッド車は、well to tank -井戸からタンクまで- では、燃料のガソリンを積むだけなのでCO2を排出しませんが、走行時にはガソリンの燃焼によるCO2が排出されます。」とのことだった。