8月5日、日本IBMは「IT全体最適化による経営への貢献」と銘打たれたイベント、「IT VISION 3」を都内ホテルで開催した。同社がクラウド・コンピューティングやグリーンITに力を入れていることもあり、各企業をはじめ多くの来場者で賑わうイベントとなった。

所有モデルから使用モデルへ

IT VISION 3のオープニングを飾った日本IBM 代表取締役 社長兼会長の大歳卓麻氏

イベントが始まると最初に登場したのは日本IBM 代表取締役 社長兼会長の大歳卓麻氏だ。同氏はエネルギー効率がよく、CO2削減が可能なソリューションなど、IBMが行おうとしている環境に対する包括的な支援、すなわちグリーンITについて語った。次いでクラウド・コンピューティングについては、IT基盤のあり方を抜本的に改革すると語り「企業においてサーバなどを自社内に持つことを目標としていましたが、クラウド・コンピューティングにおいては自社内に持たず、ネットワークからサービスを使うといった"所有モデルから使用モデルへと転換される"ことになるのではないかと考えています」とこれからの期待を述べた。

ITが消費するエネルギーは9-24カ月ごとに倍増

続いてIT VISION 3の基調講演となり、IBMコーポレーション システムズ&テクノロジーグループ Modular Systems Platform ブランド・マネジメント担当 バイス・プレジデント ジム・ガーガン氏が登壇。

基調講演を行ったIBMコーポレーション バイス・プレジデント ジム・ガーガン氏

同氏は「今日の企業は多くの課題に向き合ってシステムを考えなければなりません」と語りだす。同氏によればデータセンターにおいては危機的状況が生まれ始めているのだという。ITが消費するエネルギーは9-24カ月ごとに倍増し、アメリカにおいてデータセンターは6500箇所あるが、それらが消費する電力はユタ州全体と匹敵するといわれている。「わたしたちは煙突を持っているわけではないのでCO2問題とは無縁と思いがちですがそうではありません。Eメールや画像を送信したり、データベースにファイルを保存したりと電力を使っているのです。ですから、実際には環境に大きなインパクトを与えているのです」と同氏はITの消費エネルギー問題について語る。

CIOの中には電力供給が間に合わず、ITが十分活用できないと報告するところも増えてきているのだという。こうした状況から、ITにおいてもエネルギー問題が顕著化していると指摘。サーバを運用するエネルギーコストも上昇しており、IT機器に1ドルかければその半分のエネルギーコストが必要になるという試算も発表した。

さらに2010年以降になるとこの比率は1:1となるため、場合によってはサーバを導入するコストよりも維持費のほうが大きくなることも予想されるのだという。

数々のデータが物語る企業ITの課題。消費電力の増加は、CO2問題や運用コスト増大に直結している

また、データセンターの大半が1990年代後半に作られていることが多いが、当時は1ftあたり35-70w程度のエネルギー消費が考えられていたが、現在は150-200w、将来的には300wにまで到達するといわれている。これにより、ブレードやラックといったサーバ密度を上げるやり方にも課題があるのだという。ジム・カーガン氏は「このやり方を変えなければ大きな課題を残すことになります。われわれはもっと劇的にサーバのエネルギー消費を下げることができると考えています」と述べる。エネルギー消費とサーバ密度、この2つの課題を同時に克服することが今後のITの課題のひとつなのだと同氏は語る。