NumonyxのCEOであるBrian Harrison氏

伊仏合弁の半導体ベンダであるSTMicroelectronicsと米Intel、米投資会社Francisco Partnersの3社が出資するメモリの合弁会社「Numonyx」は7月31日、CEOであるBrian Harrison氏の来日に合わせ記者会見を開催、同社の強み、日本市場の重要性、今後の展開などについて説明を行った。

同社が扱うメモリは、NOR型およびNAND型のフラッシュメモリ、モバイルRAM、そしてPCM(Phase Change Memory)などとなっている。

多種のメモリをポートフォリオとして保有することにより、「カスタマに提供する上で必要となるメモリはすべて供給が可能だ」(NumonyxのCEOであるBrian Harrison氏)という。

NOR型/NAND型のフラッシュメモリのほか、モバイルRAMやPCMなども生産する

また、プロセス技術のみならず、PoP(Package on Package)によるMCP技術やサプライチェーンサービス、各種の管理ソフトウェアなどを提供することにより、「"ワイヤレス""組み込み""データ"の3つの分野におけるカスタマが求めるメモリをカスタムメイドのソリューションとして提供することができる」(同)とする。

プロセステクノロジーだけではなく、パッケージ、ソフトウェアなどをソリューションとして提供

生産拠点は、200mmウェハ対応工場がNORを生産するイスラエルのFab1、NOR/NAND/PCMに対応するシンガポールのFab2のほか、IntelおよびSTの保有するイタリア カターニャのM5、アグラテのR2、アイルランドのFab14となっている。

また、300mmウェハ対応工場としては、韓Hynix Semiconductorとの合弁会社Hynix-Numonyx Semiconductor(中国 無錫)にてNANDならびにDRAMの生産を行っているほか、台湾ProMOSにDRAMの生産委託を行っている。このほか、現在カターニャにNOR/NAND/PCMの生産に対応したFab3の建設を進めており、「すでに建屋の建設は終わっている。後はマーケットの状況を見て装置を入れるだけ」(同)という。

Numonyxの生産拠点(2009年からはエルピーダの工場も加わる)

このほか、同社は2008年7月10日にエルピーダメモリの300mmウェハ対応工場「E300」にて2009年より65nmプロセスでNOR型フラッシュメモリを生産することで基本合意書を交わしている。これにより、Numonyxは、「ワイヤレス分野におけるフレキシブルな成長に対応できるほか、組み込み分野におけるシェアの拡大が図れる」(同)とする。

日本市場については、「重要な市場」(同)としており、特にワイヤレス分野と組み込み分野に注力するとした。ワイヤレス分野については、高度かつ大容量のメモリサブシステムを必要とする高機能携帯電話およびサービスで世界の先を行っており、「こうした市場に対し、Numonyxはワールドクラスの顧客サポート、ソリューションおよび技術サポートを日本市場に提供することを約束する」(同)とした。

製品としては、低消費電力DDR(LPDDR)不揮発性メモリ「Velocity LP NV-RAM」の提供を進めていくという。Velocityは、従来のNOR型フラッシュメモリと比べ読み出し速度が2~3倍速いほか、システム内の実行メモリをまとめることができるため、システムアーキテクチャの簡素化、コスト削減などが可能となる。同製品は、同社が今後提供を予定しているPCMと互換性を持たせており、PCMへのシームレスな移行が可能という。

一方の組み込み分野については、組み込み向けフラッシュメモリ市場の規模が58億ドル(NOR37億ドル、NAND21億ドル)であり、その内20%程度が日本で購入されている。ただし、「(同分野において)日本はアジアへの玄関口となっており、アジア各国は日本の動きに倣う形で動くため、影響力は非常に高い」(同)とする。そのため、同社でもエンベデッド・ビジネス・グループというビジネスユニットを新たに設立して対応にあたっているという。

組み込み分野においては、日本がアジア地域に影響を及ぼす

製品としては、高集積NOR型フラッシュメモリ「M29ファミリ」を65nmプロセス世代に対応させ、家電製品や産業用とに最適化させた。同製品は、2006年に生産を開始した第6世代のMLC(Multi-Level Cell)技術「StrataFlash」を採用している。すでにサンプル出荷を開始しており、量産を2009年前半に予定している。なお、第7世代となる45nmプロセス品については、2009年後半のサンプル出荷を予定しているという。

PCMは現在、90nmプロセス採用の128Mビット品のサンプル出荷を行っているが、2009年にVelocity LPと互換性のある製品の提供を開始し、2010年に独自製品の提供を開始する予定としている。また、プロセスについては2009年中に45nmプロセス採用品のサンプル出荷を開始する計画であるとした。

なお、最後にHarrison氏は「Numonyxは世界最高のメモリ・ソリューション・プロバイダを目指しており、日本の顧客と市場のために尽力していく。そのためには日本のリソースを拡大していく」とし、日本地域を重視していくことを改めて強調した。