SAPジャパン バイスプレジデント 地域営業本部 神戸利文氏

SAPジャパンは23日、年商50~200億円規模の企業を想定したERP(Enterprise Resource Planning)パッケージ「SAP Business All-in-One FAST-START PROGRAM」の販売を開始すると発表した。

年商500億円未満の企業を想定し昨年6月に発表された「SAP Business All-in-ONE」からさらに裾野を広げるもので、必要最低限の機能をハードウェアに事前インストールして提供することで、SAP ERPを3000万円台から導入できるようにした。必要な機能については、専門のWebサイト上でユーザーが事前にコンフィギュレーションを行う仕組みで、当初は、対象とする企業の業種を、組み立て製造業、サービス業、商社・卸売り業の3業種に特化して提供する。

発表にあたったSAPジャパンのバイスプレジデント 地域営業本部の神戸利文氏は、1億円から導入ができることをうたったSAP Business All-in-Oneは、提供開始から2ヶ月で契約が成立するなど好調としたうえで、「ただ、IT投資予算をそこまでとれないという声や、実際にはいくらぐらいで導入できるかを事前に知っておきたいという声が多かった。そこで、今回、そうしたお客さま向けに、より安く、早く、低リスクで導入できるようにした」と新製品提供のねらいについて語った。

中堅企業向けソリューション「SAP Business All-in-ONE」の位置づけ。テンプレートをもとに最小限のカスタマイズでSAP ERPを提供する

「SAP Business All-in-One FAST-START PROGRAM」の位置づけ。より小規模な中堅企業をターゲットとする

同社によると、導入期間は、SAP Business All-in-Oneと比べて半分以下。3000万円からという価格についても、ソフトウェア・ライセンスのほか、ハードウェア、導入サービスの料金も含まれるものとなっている。

今回のソリューションの大きな特徴とも言えるのが、ユーザーが必要な機能を事前に選択できるオンライン・ツール「ソリューションコンフィギュレータ」の提供。これは、専用のWebサイトとして公開されるもので、ユーザーは、導入前に必要な機能を選択していくだけで、ライセンス・コストやサーバ・コスト、導入にかかるコストを見積もることができる。

機能の詳細や仕様など導入にかかわるいっさいの情報についても、Webサイト上からカタログ/マニュアル類を閲覧、ダウンロードできる。また、コンフィギュレーションの情報は、XML形式のファイルとして出力され、このファイルを実機に取り込むことで、デモやプロトタイプとして実際の操作を確認することが可能という。

「Online Configurator」のサンプル画面。従業員数、ライセンス数を入力し、必要な機能を選択すると、コスト見積が可能

「SAP Business All-in-One FAST-START PROGRAM」の導入プロジェクトの例。8週間での本稼働も可能という

提供される機能は、基本的にカスタマイズを行わなくても利用できように、SAP Best Practicesとして事前に定義された業務シナリオとなる。例えば、標準レポートとして、「在庫、購買管理、調達」、「販売管理」「サービス」「生産」「一般レポート」「総勘定元帳」「固定資産」「原価要素会計」「情報システム」「原価センタ会計」「内部指図」「収益性分析」などといったグローバル規模で利用されているものの中から選択することが可能。

また、SAP Best Practicesの日本語版では、国内の商習慣に合わせて、各種帳票が追加されている。例えば、追加レポートとしては、「株主資本等変動計算書」「受取手形管理表」、「合計見積書」、「売上げレポート(販売日報、月報)」、「在庫一覧表(明細、集計)」、「棚卸準備表」などがある。

SAPジャパン バイスプレジデント カスタマー・イノベーション・センター 田村元氏

製品の詳細を説明した、バイスプレジデント カスタマー・イノベーション・センターの田村元氏は、「メニューから必要な業務プロセスを選択し、その業務プロセスの流れを確認し、システムを導入する、という3ステップでのシステム導入が可能。導入プロジェクトは、ERPのコンサルテーションよりも、ユーザーの操作教育、機能教育のほうが比重が高まると言える」とした。

そのため、エンドユーザーが問題なく新システムに移行できるようにするための顧客向けトレーニングもあわせて実施。トレーニングでは、SAP導入の目的やスケジュールの確認のほか、SAPの機能や操作といった基礎知識、基本操作、代表的な業務処理の解説などを行い、「SAP ERPをまったく使ったことがないユーザーでもすぐに使い始められるような包括的なトレーニングプログラムを実施していく」(田村氏)としている。

新製品の展開にあたっては、ハードウェアにOS、データベース、SAP ERPを組み込んで提供したうえで、導入サポートも行うため、パートナーとの協業を重視するという。現在は、7社程度のパートナー企業と展開方法などについて詳細を詰めている段階としている。

なお、同日には、同社が推進する「エンタープライズSOA」についての発表を行い、同コンセプトに則ってシステムを実装するコンサルタントを育成するトレーニングコースを開催することや、同コンセプトを構築するのに必要な知識を網羅した方法論「Startar Kit for Enterprise SOA」、同じくSOA環境へ移行するための方法論「Methodology of Accelerated Transformation to Enterprise SOA」の提供を開始することを明らかにした。