EMCジャパン 執行役員 テクノロジー・ソリューションズ本部長 有安健二氏。1978年に日本IBM入社後、西日本ERP部長、アジア太平洋地域のB-to-Bソリューション事業統括などを務めてきた。EMCジャパン入社は今年1月

EMCジャパンは7日、同社がこれまで提供してきたITコンサルティングサービスを体系化した「情報インフラストラクチャ・コンサルティング・サービス」を発表した。同社は今年1月、日本IBM出身のソリューションビジネスのエキスパートである有安健二氏を執行役員 テクノロジー・ソリューションズ本部長に迎えており、ソフトウェアサービスを強化する姿勢を打ち出してきた。今回のコンサルティングサービス提供も同氏の指揮下で行われることになっており、「ストレージベンダから情報インフラストラクチャベンダへの転身」(有安氏)を図る。

情報インフラストラクチャ・コンサルティング・サービスは、以下の6つのメニューをベースに構築され、顧客企業はそれぞれの課題に応じて選択することができる。

  1. インフラ全体最適化
  2. 情報管理最適化
  3. 仮想化
  4. データセンター移転/統合
  5. 災害対策
  6. 情報セキュリティ

各メニューは、EMCジャパンが提供する2種類の独自テンプレートをもとにコンサルティングが実施される。

  1. ビジネス・テンプレート……ビジネスプロセスの重大性と緊急性を基準にして複数の区画に分け、サービスをテンプレートにして提供。製造/流通/通信/金融/公共の5つの業界にそれぞれ適合させた内容になっている
  2. アーキテクチャ・テンプレート……顧客に最適なアーキテクチャ標準を提供するためのテンプレート。レイヤ別、サービスレベル別に分けられている

EMCジャパン 執行役員 マーケティング本部 本部長 高橋俊之氏

テンプレートを用意した理由は「短期間で高品質の提案を行うため」(有安氏)だという。EMCジャパンが手がけてきたさまざまな事例を反映したテンプレートになっているため、顧客は「より早く、確実で、品質の高い提案を受けることが可能」(同氏)になる。

同コンサルティングサービスの流れは、現状分析/要件定義に約6週間、その後中間報告を経て、アーキテクチャ標準定義ならびにROI分析までを含んだ論理設計に約6週間、計約3カ月の期間をもって最終報告まで行う。その後は、「場合によっては、EMCジャパンで(ストレージ導入やVMwareによる仮想化など)実装まで行うこともあるかもしれないが、自社製品を念頭に置いたコンサルティングではない」(同社執行役員 マーケティング本部 本部長 高橋俊之氏)としており、あくまで"顧客に最適なITインフラを提案するサービス"と位置づけている。

製造業におけるクラス分類の例。クラスとはその業種にとっての"重み付け"で、製造業ではリアルタイムゾーンの業務(受発注、顧客管理など)が最も重要(クラスA)とされており、ナレッジマネジメントなどはバックオフィスゾーン(クラスC)に分類される

あるべきサービスレベルの定義とサービス要件が明確化されたら、それに基づいて階層化などのアーキテクチャ標準を定義していく。サービスレベル/レイヤに応じたハードウェアの提案など、実装すべきアーキテクチャについて詳細に検討する

ストレージベンダのイメージが強いEMCがコンサルティングビジネスに本格参入した理由として、高橋氏は「かつては強いハードウェアがサービスを牽引していたかもしれないが、今は、サービスがハードウェアを引っ張る力を持ち始めている。顧客にも"EMCはサービスの会社"という認識を持ってもらいたい」とする。同サービスは現在、有安氏の指揮下350人のスタッフのうち20名がITコンサルタントとして業務に当たることになるが、「今後3年間で、5倍の100人体制にもっていきたい」(有安氏)と、さらに注力していく構えだ。「ITインフラの中心はハードウェアではなく情報。その情報が爆発的に増大し、ITインフラが複雑化("スパゲッティ化")する中、"情報の全体最適化"をポリシーに掲げるEMCがコンサルティングを行うのは自然な流れ」と語る有安氏。ソリューションビジネスにおいて幅広い経験をもつ同氏が、"ストレージベンダ"のイメージチェンジにどれだけ貢献できるのか、その手腕が注目される。