アイログは6月27日、プロセス製造業やプロセス加工工程のある製造業を対象に、生産計画と詳細スケジューリング立案を中心としたソリューション「ILOG Plant PowerOps 3.0」(PPO 3.0)の国内販売を開始すると発表した。

PPO 3.0では、複雑な製造工程を持つプロセス製造業に固有の制約条件を精密にモデル化でき、現状に即した最適なプランとスケジュールの策定が可能。

ILOG Plant PowerOps 3.0の概要

想定ユーザーとしては、乳製品や医薬品、化学製品などの製造業が挙げられている。これらは「需要の変動幅が大きい」「生産プロセスが複雑」「製品構成の変更、新製品導入、旧製品廃止などが頻繁」「品質維持などに関わる制約条件が複雑」といった特徴がある。PPO 3.0では、こうした複雑な条件下で最適な計画を立案できるため、経営側での生産計画と生産現場での設備のスケジューリングの乖離をなくし、実情に即した緻密なスケジュールが立案できるという。

アイログ 代表取締役ゼネラルマネージャー 和多田茂氏

まず概要説明を行なった同社の代表取締役ゼネラルマネージャーの和多田茂氏は、同社が強みを持つ分野として「BRMS(Business Rule Management System、ビジネス・ルール管理システム)」「ODMS(Optimization Decision Management System、最適化意志決定管理システム)」「Visualization(可視化)」の3領域を挙げ、さらにこの3領域それぞれについての提供形態として「自社サービスおよびSIパートナーによるカスタム・ソリューション」「フレームワーク」「SCMアプリケーション」の3種があるとした。今回発表のPPO 3.0は、ODMSの技術に基づくSCMアプリケーション・パッケージという位置づけになる。また、PPO 3.0は「どの設備で何が起こっているかや、在庫状況を可視化できる」といい、可視化の技術も役立っているようだ。

アイログのSCM製品群

同氏はまた、サプライチェーン管理には、「戦略レベル」「戦術レベル」「運用レベル」の3つの視点があるという。戦略レベルでは、生産拠点の配置や物流ネットワークの最適化といった年単位での検討が、戦術レベルでは在庫や製品フローの最適化といった四半期単位や月単位の検討が必要になる。PPO 3.0は運用レベルに対応し、週単位/日単位/時間単位での生産計画や詳細スケジューリングに対応するソリューションだと位置づけた。

PPO 3.0の特徴

アイログ セールス&マーケティングマネージャー ゲイ・ジョエル氏

続いて詳細説明を行なった同社のセールス&マーケティングマネージャーのゲイ・ジョエル氏は、既存のERPパッケージ等との棲み分けについて、同社の最適化エンジンがSAPやOracleなどのERPパッケージに採用された実績があることを紹介しつつ、ERPパッケージの中のモジュールとしての機能提供ではユーザーの要求に完全に対応することは難しいため、単独製品としての需要があると判断したという。一方でERPパッケージと競合するものではないとし、ERPからのデータに基づいて計画/スケジューリングをPPO 3.0で実行、結果をERPに戻す、という形での連携を想定しているとした。同氏は「PPO 3.0は"ERPのアドオン・システム"だ」という。

また同氏はPPOの採用例として仏食品大手のダノンでの例を紹介した。ダノンではPPOの導入によって保存期限切れなどで廃棄する無駄が半減し、効率化が実現したという。さらに、PPO導入前に別の計画/スケジューリングシステムを導入していたが、これは経営レベルの計画策定には対応していても細かな制約条件等には対応しなかったため、製造現場では別途Excelを使ってスケジュール管理を行ない、データだけを計画システムに入力するという二重管理状態だったそうだが、PPOの導入後一週間程度でPPOのスケジューリングの精度が製造現場でも認められ、Excelは使われなくなったという実績もあるとのことだ。

ダノンのヨーグルト製造プロセス

プラニングとスケジューリングを統合。制約条件の管理も実現

PPO 3.0は、導入に当たって高度なSIサービスが必須となるため、販売にあたっては新日鉄ソリューションズと協業し、同社を通じて提供される。ライセンス価格は1工場当たり1312万5000円からで、SI費用は別途となる。既に数件のプリセールス活動が始まっており、年度内に数プロジェクトの受注を見込んでいるとのこと。