6月24日から25日にかけて「GridWorld 2008」と「Next Generation Data Center 2008/Green IT Worid」が東京国際フォーラムにおいて同時開催された。

マイクロソフト 業務執行役員 サーバープラットフォームビジネス本部 本部長 五十嵐光喜氏

基調講演では「Windows HPC Server 2008 製品紹介とマイクロソフトHPC戦略」と題して、マイクロソフト 業務執行役員 サーバープラットフォームビジネス本部 本部長である五十嵐光喜氏の講演が行われた。

五十嵐氏は、従来のHPC(High Performance Computing)は学術系を中心に展開してきたが、現在は製造業分野や金融業、デジタルコンテンツなど適用分野を広げていることを指摘。業務系での利用が増えることが予測される今後について「学術分野等と通常の企業インフラに対して、二重投資になっているという感じが否めない。特にx86系サーバのHPCが増えてくると、経営層からは一本化できないか、もっと効率的に運用できないのかというチャレンジが出るだろう。これからは一元化を進めることが望まれる」と語った。

今日のHPC利用環境

マイクロソフトは2005年にビル・ゲイツがHPC市場に参入すると発表し、2006年に「Windows Compute Cluster Server 2003」を初のHPC向け製品として発表した。2008年後半にリリース予定となっている「Windows Server 2008」をベースに「HPC Pack」を追加した「Windows HPC Server 2008」が第2弾となる(6月最終週にRCがリリースされる予定)。

Windows HPC Server 2008

「従来は特殊な開発ツールで構築が必要だったが、Visual Studio 2008が用意された。これによって、企業インフラ、人的インフラとの融合を図ることができる。そして最終的に、Excel等の様々なアプリケーションとの連携を実現する」と五十嵐氏はマイクロソフトのHPC戦略について語る。

マイクロソフトのHPC戦略

マイクロソフトでは1台の筐体に2桁のコアが搭載される「メニーコア」時代が近く到来すると予測している。それに向けて並列プログラミングを実現するための取り組みが行われているが、現時点でVisual Studioによる並列デバッグ機能等が利用可能となっている。 ジョブスケジューラはSOAベースとなっており、サービスを呼び出すだけで比較的簡単に並列処理を行うことが可能となった。既存のC++で書かれたコードも、ループ部分にキーワードを書き加える程度の修正で分散処理ができるのが特徴だ。

サービス型の分散処理

五十嵐氏はWindows HPC Server 2008のカテゴリ内での地位が向上していることもアピールした。これは、半期に1度スーパーコンピュータやHPCの性能ランキングを発表する「TOP500プロジェクト」の最新ランキングを受けてのものだ。6月15日に発表されたランキングでは、アメリカのNationa Center for Supercomputing Applications(NCSA)のシステムが23位にランクインしている。 「1184ノード、9472コアでNCSAにおいて実現した。同じハードウェア上でLinuxと比べて実行効率が7.7%向上した。OSインストールからLnpack実行までは4時間。技術者の方が望む計算を実現するためのシステム構築に時間がかかるのでは意味がない。Windows HPC Server 2008の非常に簡易な導入プロセスならば4時間で実現できるということだ」と五十嵐氏。

さらに同ランキングにおいて39位にランクインした、スウェーデンのUmea Universityのシステムの内容についてグリーンITが求められている時代にふさわしい結果が出せたと強調した。

「672ノード、5476コアと若干低い数値ではあるが、実行効率85.6%ということは特筆すべきこと。通常は70%程度の実行効率。実行効率が良いということは、同じ消費電力で多くの結果が出せる、同じ結果を出すために必要とする電力が少ないということ。非常に効率の良い結果であり、6月末に予定されているGreen500にもランクインされる予定となっている」(五十嵐氏)

今後、マイクロソフトのHPCに関するロードマップとしては、HPC環境に仮想化をさらに取り入れ、最適化して行くことを目指すとしている。これは、同じハードウェア上で用途に合わせてデスクトップOSとHPC OSを自由に展開できるようにするための方策だ。マイクロソフトのHPCへの取り組みとしてVersion3にあたるこの取り組みについて、五十嵐氏は「大体2年ごとの展開を考えているため、2010年頃に実現されるだろう」としている。

HPCロードマップ