発表を行なったPaul Cormier氏(EVP&President, Products & Technologies, Red Hat)

米Red Hatは18日(現地時間)、マサチューセッツ州Bostonで開催中のRed Hat SUMMIT Boston 2008会場で、仮想化に関する同社の新たな取り組みについて発表した。今回発表されたのは以下の3点になる。

  • 組込型ハイパーバイザの開発
  • 仮想化インフラ管理ソフトウェア
  • 仮想化対応のセキュリティ・インフラ

ハイパーバイザ

軽量で組込型としても利用可能なハイパーバイザ。LinuxおよびWindowsなどのx86用ゲスト環境の実行をサポートする。Linuxカーネルに仮想化エンジンとして組み込まれているKVMをベースに開発され、ライブマイグレーションやHA機能も備えるほか、Xen用のゲストの実行もサポートするという。USBメモリ・キーやSDカードといったFlash Driveにインストールしてブート・デバイスとして利用することでサーバやクライアントPCに組み込むことができる。フットプリントは、「フル・ハードウェア・サポート」で40MB程度だといい、安価な64MB程度のUSBメモリ・キーに収まる。

ハイパーバイザに関する説明スライド

仮想インフラ管理

Webベースの仮想環境管理プラットフォーム。多数(数百~数千)の仮想サーバの集中管理を想定し、物理サーバ、仮想サーバ、ストレージを対象にライフサイクル管理、リソース管理、ポリシー・ベースの運用管理、監査やモニタリングといった機能を提供する。β版のダウンロード公開も始まっている

仮想インフラ管理に関する説明スライド

セキュリティ・インフラ

エンタープライズ環境で要求されるレベルのセキュリティを仮想サーバでも実装可能にするfreeIPAプロジェクトが開始される。IPAは、Identity, Policy, Auditの頭文字を取ったもので、この3つの要素の実現を目指すもの。Ver.1ではまずIdentity機能を実現して仮想サーバへのユーザーログインに対してシングル・サインオンを実現する。続くVer.2ではポリシーベース管理や監査機能が実現される予定。

セキュリティ・インフラに関する説明スライド

いずれも、製品としてのリリースは2008年第4四半期を予定している。

技術面から説明を行なったCTOのBrian Stevens氏

発表に続いて技術説明を行なった同社のCTOのBrian Stevens氏は、サーバの仮想化を実現するハイパーバイザを「次世代のOS」だと位置づけた。さらに軽量なハイパーバイザの開発によって、従来のOSが担っていた2つのインタフェース機能である「ハードウェアに対するインタフェース」と「アプリケーションに対するAPI」とが分離され、ハイパーバイザは物理ハードウェアに対するインタフェースを提供するものだという。ユーザー環境は、かつてはプロプラエタリなOSにロックインされていたが、これはオープンソース・ソフトウェアによって解放が始まっている。さらに仮想化はハードウェアによるロックインからも解放可能にする技術であり、ロックインからのユーザーの解放、という大きな流れで見れば仮想化への取り組みは必然、ということになるようだ。

なお、新しいハイパーバイザはKVMをベースとして開発されているが、これはRed HatがXenからKVMにサポート対象を変更する、という意味ではなく、新たにサポート対象が加わる、ということだとされている。