迷走を続けていた「ダビング10」が実施されることが19日、決定した。実施開始日は7月4日か5日の予定。デジタル録画機の拡販が見込まれる北京オリンピック開催を約1カ月半後に控え、権利者側が妥協した。どちらの日に実施されるかは、放送事業者などが加盟するデジタル放送推進協会(DPA)とメーカーの調整に委ねられる。

ダビング10は、コピー回数を「コピー9回+ムーブ1回」の10回に制限するデジタル放送の私的利用に関する運用ルール。現在は「ムーブ1回」の「コピーワンス」となっている。ダビング10の実施を巡っては、著作物複製への「適正な対価の還元」を求めて、HDDレコーダへの補償金課金を求める権利者側と、それに反発するメーカー側が対立。6月2日に予定されていた実施がずれ込んでいた。

だが、北京オリンピックの開催を約1カ月半後に控え、経済産業省と文部科学省は17日、録画機器メーカーなどから著作物複製の補償金を徴収する「私的録音録画補償金」の対象に、Blu-ray Disc(ブルーレイ・ディスク)を加えることで合意。メーカー側が譲歩した形となり、権利者側が妥協できるかが焦点となっていた。

こうした情勢を受け、ダビング10の実施時期について議論を重ねてきた総務省の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」は19日、急遽会合を開催。開催後1時間にわたる議論の中では、メーカー側と権利者側の委員らがお互いの主張を繰り返すばかりで、ダビング10の実施についての合意は当分得られそうもない雰囲気が漂った。

だが、同委員会の主査を務める慶應義塾大学の村井純氏が、ダビング10の早期実施の意義について委員に粘り強く説得。これに対し、権利者側の代表を務める日本芸能実演家団体協議会の椎名和夫氏が「このままではいつまでたってもこう着状態。ダビング10の実施をこの場で決定してはどうか」と急転直下の発言を行った。

これを受け、村井氏がその場で委員らと調整。DPA側の委員から「周知広報などの必要性に鑑み、明日から急いで準備するとしても、2週間後ぐらいの実施が望ましい」との意見が出た。その結果、7月4日(金)か5日(土)に実施することで合意がなされた。