厚生労働省がこのほどまとめた「今後の仕事と家庭の両立支援に関する調査結果」で、企業の従業員規模で、仕事と家庭の調和を意味する"ワークライフバランス"の実現度合いが二極化する現状や、企業と従業員の間の意識の違いが浮き彫りになった。

今回の調査は、厚生労働省がニッセイ基礎研究所に委託して、全国の規模10人以上の企業4,000社と、対象企業に勤務する従業員のうち、40歳以下の正社員1万2,000人に対して、2007年11 - 12月にかけて実施。それぞれ763社(有効回答率19.1%)、1,553人(同12.9%)からの有効回答をもとにまとめられた。

現在、"1歳(一定の要件を満たす場合には1歳半)未満の子を養育する男女労働者が、原則として子1人につき1回取得できる"と「育児・介護休業法」で定められている育児休業制度。回答した企業のうち「対象となる子の上限年齢」「対象となる従業員の範囲」「子1人について取得可能な回数」、「休業期間中の金銭支給」のいずれかについて法律を上回る対応をしているのは24.6%。企業規模別に見た場合、規模299人以下は2割を下回る一方で、規模1,000人以上では55.2%と過半数を占めた。

また、女性正社員の働き方で多いパターンとして、全体では「子を出産しても継続して就業している」と答えた企業は40.5%。しかし、「妊娠・出産を契機に退職する」(18.2%)、「結婚を契機に退職する」(14.2%)と、合わせて3割以上の企業では、女性従業員が結婚や妊娠・出産後に仕事を継続していない実態が明らかになった。さらに、こうした傾向は従業員規模が小さい企業ほど高く、63.5%が出産後も継続して勤務している1,000人以上の規模の企業に対して、規模100 - 299人では2割以上の企業で「結婚を契機に退職する」ケースが目立つ結果となった。

一方、両立支援のための制度では、「(育児のための)短時間勤務制度(規定と運用を含む)」が59.6%と最も導入の割合が高く、以下「時間外労働の制限」(48.9%)、「深夜業の免除」(45.6%)と続いている。制度の導入度合いも、従業員規模による格差が見られる傾向にあり、規模1,000人以上では86.5%が「短時間勤務制度」を導入する一方で、規模10 - 29人では42.3%にとどまっており、導入しない理由として、「育児中の人等、制度の対象となる従業員が少ない」(58.8%)、「短時間勤務になじまない業務が多い」(28.4%)、「制度の対象となる従業員はいるが、短時間勤務のニーズがない」(20.9%)の順に回答が多かった。しかし、その反面で「育児中の人等、制度の対象となる従業員が少ない」「制度の対象となる従業員はいるが、短時間勤務のニーズがない」と回答した企業に勤務する従業員の4割程度は、短時間勤務制度を利用したいと考えていることもわかり、企業と従業員の認識に差異が生じている現実も示される結果となった。

また、育児休業制度の利用意向について、女性の68.9%に対して、男性も31.8%にののぼる。その理由では、女性は「子どもが小さいうちは、自分で育てたいから」(84.1%)がもっとも多く、男性は「子どもが小さいうちは、育児が大変だから」(79.1%)がトップとなった。しかし、育児休業の取得しやすさに対する質問で「取得しやすい」と回答した企業が女性の場合は71.2%を占めたのに対して、男性の場合は20.1%にとどまり、従業員調査でも86.3%の男性が「取得しにくい」と回答しており、企業と従業員の双方の実感が一致している。また、従業員調査で「利用しにくい」と回答した従業員に対して、その理由を訊ねる質問では、63.9%が「制度を利用すると業務遂行に支障が生じる」と回答。以下「制度の内容や手続きがよくわからない」(37.5%)、「制度利用に対して上司の理解が得られない」(31.9%)、「制度を利用すると昇給・昇格に悪影響を及ぼす懸念がある」(28.1%)と続いた。

今回の調査では、育児休業制度や育児のための短時間勤務制度に対する企業と従業員の認知度の差異を比べるため、企業データと従業員データのマッチングが行われた。その結果、いずれの項目でも従業員の認知度は、企業が認識している従業員の認知度を下回る結果となり、企業が思うほどに従業員が制度の内容を把握していないことがわかった。

また、今後の制度の拡充意向については、現在積極的な企業と消極的な企業との間に今後も格差が開き、二極化が懸念される結果が示された。現在、育児やその他の理由で短時間勤務を認めている企業の3割強が「既存の制度を充実したい」と回答したのに対して、制度のない企業の77.9%が「いずれの短時間勤務も認めていない」、76.7%が「育児以外のみ(の事由で短時間勤務を認めている)」という企業では、8割弱が「現状どおりでよい」と回答している。