米Yahoo!の委任状争奪戦を仕掛ける投資家のCarl Icahn氏は6月4日(現地時間)、同社役員会に宛てた手紙を送付した。同氏は手紙の中でYahoo!が導入した従業員の退職金プランなど、Microsoftによる買収を見越した防衛策の数々を非難、それらを撤回するよう促した。一方でYahoo!側も同氏に対して返答を行い、それら施策の数々の正当性を訴えている。

今回のIcahn氏の手紙では、Yahoo!の退職金プランなど、いわゆる"ポイズンピル"的な買収防衛策の存在がクローズアップされている。Microsoftが1月末にYahoo!買収を発表した後、Yahoo!は2月中旬に同社の退職金プランの拡充を行ったことが米証券取引委員会(SEC)への提出書類から明らかになっている。これは他社による買収が原因で、本人の意志とは関係なく解雇された場合、あるいは本人の意志で自ら辞職した場合など、定められた期限内であればYahoo!従業員に対して退職金を支給するというもの。MicrosoftがYahoo!を買収した場合、これらの退職金負担が一気にのしかかる可能性があり、買収後に発動する一種のポイズンピル(買収防衛策)的な役割を担うといえる。株主訴訟により米デラウェア州高等裁判所で6月2日に公開された機密資料によれば、このコスト負担をYahoo!が最大21億ドルほどと見積もっていたことがわかっている。

今回の委任状争奪戦の末、Yahoo!のMicrosoftへの売却を最終目標とするIcahn氏にとって、こうした施策の数々は障害の1つとなる。経営権の掌握と合わせて、これらの排除も並行して進めていくのが狙いとみられる。だがYahoo!はIcahn氏の意見に対し「業界でも屈指の優れた技能を持つ人材をつなぎ止めるのに必要な策」と反論し、退職金プランの狙いはポイズンピル的な性格とは異なると主張している。一方で潜在的な買収相手であるMicrosoftは退職金プランに理解を示しており、上記の金額とは別に買収後のYahoo!従業員に対して総額15億ドルのインセンティブ提供を用意していたと述べている。