2003年に制定された少子化社会対策基本法に基づき、内閣府が毎年発行している「少子化社会白書」。このほどまとめられた「平成20年(2008年)版」では、日本の少子化の現状や、将来推計人口等に基づく今後の人口減少・少子高齢化の見通しとともに、少子化対策の取り組みとなる「子どもと家族を応援する日本」重点戦略、および「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」について解説が盛り込まれ、少子化対策の一環として、ワーク・ライフ・バランスの実現のための働き方の変革が強く打ち出されている点がポイントだ。

少子化社会白書では、「国民の希望する結婚や出産・子育ての実現により少子化の流れを変えるためには、就労と出産・子育ての二者択一を迫られる状況を解消し、『女性が安心して結婚、出産し、男女ともに仕事も家庭も大事にしながら働き続けることができるシステム』へと変革していくこと」と訴え、第3章を「仕事と生活の調和の推進」とし、その重要性が強調されている。

その上でまず、ワーク・ライフ・バランスの実現を困難にする子育て期にある女性にスポットが当てられている。厚生労働省が2001年度に行った調査によると、出産の1年前に仕事を持っていた女性のうちの約7割が出産半年後には無職となっている。また、育児休業を利用して就業を継続する割合は着実に増えているものの、継続就業率全体では過去20年間でほとんど変化が見られないという調査結果も紹介している。

さらに、30ヶ国の先進国が加盟する国際機関である経済協力開発機構(OECD)が行った「6歳未満の子を持つ母親の就業率の比較」調査では、3歳未満で72.9%、3~6歳未満で82.5%ともっとも高い水準を示したスウェーデンに対して、日本は3歳未満で28.5%、3~6歳未満で48.2%。これは、アメリカや他の欧州先進国と比べても、子育て中の女性の就業率で日本は格段に低い水準で、出産後のワーク・ライフ・バランスの実現が難しい社会を表す結果となっている。

実際、日本労働研究機構による「育児や介護と仕事の両立に関する調査」では、出産前後で仕事を辞める理由として、52%は「家事・育児に専念するために自発的に辞めた」と答えているものの、24.2%が「仕事を続けたかったが仕事と育児の両立の難しさで辞めた」、5.6%が「解雇された、退職勧奨された」と答え、約3割が両立環境が整わないことを理由に退職を余儀なくされたことになる。

一方、仕事と生活の調和の問題は、女性に限ったものではない。総務省が2007年に行った「労働力調査」によると、男性労働者の平均週間労働時間は、子育て世代にあたる、30~34歳で48.6時間、35~39歳で49.4時間、40~44歳で49.2時間といずれも50時間に迫る。また、週60時間以上就労している割合がいずれの世代も約2割に達している。

しかし、内閣府の男女共同参画会議の下に設置された「少子化と男女共同参画に関する専門調査会」が2006年に行った「少子化と男女共同参画に関する意識調査」によると、既婚者の男性のうち、生活の中で"仕事優先"を希望する人の割合はわずか約2%に過ぎない。それに対して、"仕事・家事(育児)・プライベートを両立"を希望すると答えた人は約32%。さらに、"プライベートな時間優先"(29.9%)、"家事とプライベート優先"(12.2%%)、"家事優先"(5.5%)を合算すると、約8割の男性が家事・プライベートを仕事と同等以上に重視したいと希望している結果となる。しかしながら、その実態を問う設問では、5割以上の人が"仕事優先"と回答しており、希望と現実の間には大きな隔たりがあると、白書では指摘している。

また、白書では企業における仕事と生活の両立支援策は着実に整備されている点を報告しながらも、「職場において仕事と生活の調和を実現できるような仕事の仕方になっていないため、実際には利用しにくい」と、問題点を指摘する。内閣府が2006年3月にまとめた「企業における子育て支援とその導入効果に関する調査研究」では、両立支援策を利用促進する上での問題点として、"代替要員の確保が難しい"(46.7%)、"社会通念上、男性が育児参加しにくい"(45.4%)と半数近くが答えたほか、"日常的に労働時間が長い部門・事業所がある"(33.3%)、"職場で周りの人の業務量が増える"(30.9%)などが多く挙がった。いずれも休業することによる周囲への負荷を配慮する声であり、現在整備されている制度の利用が職場における業務遂行に支障をもたらす業務体制と時間管理になっていることが労働者が制度を利用することを躊躇わせているとしている。

政府では2008年度、ワーク・ライフ・バランスの推進事業として、厚生労働省が10億2700万円、内閣府が4300万円の予算を計上。その他関連事業や、国土交通省や人事院の予算も含めると、政府のワーク・ライフ・バランス関連予算の総額は、2007年度の37億5500万円から2008年度は48億2800万円となり大幅に引き上げられている。