29日、ビジネスオンラインの藤井博之社長が代表を務める、SaaS/ASP事業者のサービス連携を推進する「SOABEX研究会」の定例会が開催され、「企業ディレクトリ」についてのセッションが開催された。当日は、総務省 情報通信政策局 情報通信政策課 課長の秋本芳徳氏をゲストに迎え、総務省の取り組みなども説明された。

ビジネスオンライン 藤井博之社長

企業ディレクトリとは、各会社、団体ごとに異なっている企業コード(取引先コード)を統一しようというものだ。藤井社長はこれにより、アプリケーションやデータベースを共用化でき、生産性や国際競争力がアップできると語る。

確かに、企業コードを統一化すれば、EDIにおいてもコード変換等の余計な作業も減り、コストダウンが図れ、さまざまなシステムと連携した新しいサービスの登場なども期待できる。しかし、すでにある企業の情報システムを共通の新しいコード体系に置き換えるのは容易なことではない。藤井社長も「日本は情報システム過多で、レガシーシステムがいっぱいあり、置き換えるにはコストがかかる。新しい仕組みもレガシーシステムと共通化していく必要がある」と語る。

そこで、考えられているが企業内のデータベースを置き換えるのではなく、企業間取引のデータ交換を可能するため、コードを読み替えるための変換用データベース(「企業ディレクトリ」)を共通で持ち、サービスとして提供しようという試みだ。藤井社長は、これに各企業の財務情報や取引先情報、金融機関の決済情報、さらに信用調査機関の情報システムとも連携する、ダイナミック企業間取引システムという壮大な計画も披露した。

藤井社長が適用例として示した「ダイナミック企業間取引システム」

そして、藤井社長は企業ディレクトリの展開する上での成功要因として、メリットが明確であり、社会的ベネフィットがあること、現行システムへの移植や組み込みが容易であること、企業情報を積極的に登録・更新するようなしくみであること、NGNやSaaSなどの新しい形態を想定していること、コードが汎用的・不変的でユーザーが容易に利用できること、の5点を挙げた。

行政側においても、法務省の会社法人番号(220万件)、厚労省の雇用保険適用事業所番号(161万件)、経産省の事業所番号(47万件)など、現在企業コードは統一されていない。

各省庁の発行している企業コードの例(出典:「ICTによる生産性向上戦略」の答申案)

総務省では、「ASP・SaaS普及促進協議会」「情報通信審議会」で企業ディレクトリについての検討を行ってきており、5月9日には、「ICTによる生産性向上戦略」の答申案が公表された

この中では、企業ディレクトリの想定される用途として、取引先企業に係るデータの一元化や売掛金の消込み、複数のASP・SaaSの連携、電子取引を提供する企業の比較、取引先企業の募集や比較、電子入札における応札企業の照会などが挙げられている。

総務省 情報通信政策局 情報通信政策課 課長 秋本芳徳氏

また、答申案の中では具体的なコード体系として、「既に多くの企業コードが存在していることを踏まえれば、既存の企業コードを活用する方法が現実的」と述べ、有力候補として電話番号を挙げている。そしてその理由を「電話番号は、ある時点では企業を一意に特定でき、多くの企業を網羅し、契約者の同意があれば公開も可能で、費用面も含めて利用し易く、利用の公平も制度上担保され、国際標準化も図られている」としているが、一方で「不変ではない、複数の電話番号を使用している企業においては企業ディレクトリのコードとしてどの電話番号を使用するかに関し当該企業自身による「宣言」が必要」という課題を挙げている。

総務省 情報通信政策局 情報通信政策課 課長の秋本芳徳氏は、これについて「コードというのはインフラの1つである。SuicaとPASMOが連携し、一気に普及することによって小口決済という新しい用途が生まれたように、電話番号というインフラの価値を別用途で示していけないかという思いがある」と語った。また、企業ディレクトリ普及のためのキラーになるのは、ASP・SaaSであると述べた。