インテルは30日、米Intelの上級副社長兼デジタル・エンタープライズ事業本部長のパット・ゲルシンガー氏が来日したことを受けてエンタープライズ関連を中心とした自社製品の動向に関する説明会を開催した。

Intel 上級副社長兼デジタル・エンタープライズ事業本部長 パット・ゲルシンガー氏

ゲルシンガー氏は冒頭、"ムーアの法則"や"メトカーフの法則"、"リードの法則"などを引き合いに出し、「ソフトウェアやネットワークの進化に対応するために、Intelは互換性と拡張性があるアーキテクチャを提供する必要がある」とし、「今後の方向性としては、mW単位の機器から、P(ペタ)FLOPSを実現するような機器まで、すべてのコンピュータにIntelのアーキテクチャを展開したいと考えている」とした。

mW単位の機器から、PFLOPSを実現するような機器まで、すべてのコンピュータにIntelのアーキテクチャを展開

自然現象のシミュレーションやゲノムの解析といったハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)の分野は、膨大な計算処理が必要とされるため、CPUには現在の数十倍以上の処理性能が求められる。「現在の処理速度は500TFLOPS級が最高クラスだが、2年後にはPFLOPS級の処理速度が求められるようになる。特にゲノムの研究ではE(エクサ)FLOPS級の、正確な気象予測のためにはZ(ゼタ)FLOPS級の処理速度が求められる。我々の目標は、こうした処理速度を実現できるプラットフォームを構築することで、将来の研究の突破口を切り開くことを実現することにある」とし、Intelが同分野に対し、注力していることを強調した。

HPCの分野では将来的にはZFLOPS級の処理速度が求められるようになる

ミッションクリティカルの領域では、次世代Itaniumプロセッサ「Tukwila」の開発が進められている。Tukwilaは既報のとおり、20億を超すトランジスタ、30MBのキャッシュ、Quick Path Interconnectの採用などの特長を持つ。

一方、ボリュームサーバの領域は、プラットフォームとして「Caneland」が提供されているが、現在、2008年後半の提供に向け6コアプロセッサ「Dunnington」の開発が進められている。Dunningtonは、45nm high-kプロセスを採用し、19億個のトランジスタと16MBのL3キャッシュを実現することにより、「既存のCanelandシステムからさらにパフォーマンスを高めることが可能になる」とする。

また、サーバの仮想化について、「将来、あらゆるシステムは仮想化されるだろう」とし、「仮想化によりサーバの統合を図る段階を"Virtualization 1.0"とすると、その先にはより多様な機能を仮想化で実現する"Virtualization 2.0"が存在する。Intelでは、こうした多様化した仮想化を実現するために、CPUの命令セットやメモリマネジメント、I/Oの機能などアーキテクチャのあらゆる部分を再構築し、全面的に仮想化の機能に対応できるようにしている」とした。

データセンタ領域に関して、「"エネルギー効率"が重要な要件である」とし、「Climate Savers Computing Initiative(CSCI)」の活動に注力していることを強調したほか、Tick Tock(チックタックモデル)に沿ったプロセッサのロードマップの提示を行った。

2008年第4四半期に量産が予定されているNeharemでは、Penryn同様45nmプロセスが用いられるが、コアアーキテクチャの刷新が行われる。これはすでに既報のとおりだが、Quick Path Interconnectの採用、メモリコントローラの統合といった大幅な変更が行われる。

さらに、ビジュアル・コンピューティング領域への取り組みを進めているとし、「今後は硬直的なパイプラインアーキテクチャから、プログラマブルでユビキタスな統一されたアーキテクチャへとシフトしていく」ことを考えているとした。これにより、将来のビジュアル・コンピューティングで現実味溢れる臨場感を提供できるようになるほか、高品位なオーディオとビデオのサポート、コンピュテーショナルモデリングなども提供できるようになるとした。

ビジュアル・コンピューティングのためにグラフィックスを再定義

こうした取り組みとして開発中のアーキテクチャ「Larrabee」が挙げられる。Larrabeeは複数のIA(Intel Architecture)コアを搭載するほか、新たなベクトル命令セットが搭載される。「Larrabeeは、本当の意味でビジュアル・コンピューティングの定義を変え、広範な分野にこれを提供することができる」と、その効果を強調する。

ビジュアル・コンピューティングを実現するためのアーキテクチャ「Larrabee」

携帯機器、特にインターネットへ接続する端末として、Atomプロセッサを搭載したMIDがある。ゲルシンガー氏は、Atomについて、「現在は45nmプロセスの"Menlow"を採用しているが、2009~2010年に登場予定の"Moorestown"では消費電力の低減、フォームファクタの小型化ができるようになる。Atomに関しては、今後も改善が続けられる。そして、消費電力を改善しつつ、高い性能を実現していく」とした。

Atomプロセッサ「Menlow」と次世代Atom「Moorestown」の特長