迷走を重ねてきた「ダビング10」の実施が延期されることが29日、ついに確定した。合意形成を図ってきた総務省の委員会で合意できなかったためだが、担当した委員が「官が出てくるしかない」と発言するなど、当時者間の調整に限界感もみられる。今後の議論には、総務省や文化庁に加え、経済産業省が"参戦"するとの情報もあり、事態は複雑化してきた。

29日に開かれたのは、総務省の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」の第38回会合。ダビング10は、同委員会で提案された、コピー回数を「コピー9回+ムーブ1回」の10回に制限するデジタル放送の私的利用に関する運用ルール。6月2日からの実施が予定されていた。

だが、文化庁で行われている「私的録音録画補償金」に関する議論において、文化庁が示した案にメーカー側が反発。「ダビング10実施は権利者への適正な対価が前提」とする権利者側との意見調整がつかず、ダビング10実施時期の延期がほぼ確定していた。

29日に開かれた検討委員会の会合では、ダビング10実施を検討してきたフォローアップWGの主査の慶應義塾大学の中村伊知哉氏が、「関係者間の合意形成はできなかった」と報告。続けて、「もはや官が出てくる場面。関係省庁間の調整が必要ではないか」と述べた。

同委員会の主査を務める慶應義塾大学の村井純氏は、「合意できなかったのは主査として残念」と発言。「6月2日は私の誕生日だった。次の目標は誰の誕生日になるのか? 」と今後の見通しがたたないことを冗談めかして表現した。

権利者とメーカーの立場の溝は埋まっていない。総務省や文化庁などに加え、経済産業省も議論に加わる動きをみせているとの情報もあり、事態は一層複雑化してきた。