6月2日に予定されていたダビング10の実施延期がほぼ確定した。HDDレコーダーへの私的録音録画補償金の課金案に反発するメーカー側と、ダビング10実施は権利者への適正な対価(補償金)支払いが前提とする権利者側との調整がつかなかったことが明らかとなったため。文化庁は29日に開催予定だった「私的録音録画小委員会」の開催延期を決定した。

ダビング10は、コピー回数を「コピー9回+ムーブ1回」の10回に制限するデジタル放送の私的利用に関する運用ルール。6月2日からの実施が予定されており、総務省の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」で実施時期についての合意が図られてきた。

だが、日本音楽著作権協会(JASRAC)常務理事の菅原瑞夫氏が、「ダビング10の実施については、権利者への適正な対価の支払いが前提。現在の制度では、権利者への対価の支払いは私的録音録画補償金のみ」と話したように、事実上は文化庁の「私的録音録画小委員会」での議論とリンクしている。

一方、文化庁の小委員会の議論では、私的録音録画補償金制度の見直し案として、iPodなどの音楽プレイヤーとHDDレコーダーを同補償金の課金対象とすることを同庁が提案。それに対し、メーカー側は「縮小することになっているはずの私的録音録画補償金制度が、逆に拡大されることになる」と反発。メーカーと権利者の調整の場として29日に開催される予定だった小委員会も、「開催できるような状況にない」(文化庁)とし、延期が決定した。

もちろん、ダビング10の実施時期について直接議論しているのは総務省の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」。だが、文化庁による権利者側とメーカー側との私的録音録画補償金に関する調整が遅れ、事実上、6月2日に予定されていたダビング10の実施は絶望的となった。

29日には総務省の検討委員会第38回会合を開催予定。ダビング10の実施時期は一体いつになるかについて、同委員会での議論が注目される。