韓国政府の知識経済部と教育科学技術部は、教育の情報化政策の一環として進めている「デジタル教科書事業」に、Linuxを使用することを決定した。

デジタル教科書とは、教科書や参考書、問題集などの教材をモバイル端末形態にしたもの。動画やアニメーションなど、表現方法が増えるうえ、通信機能を用いて双方向コミュニケーションを行ったり、学習者のレベルに適したコンテンツを表示させたりすることが可能だ。また、学習者自らが学習内容を制作/編集/出力したり、学習関連の検索を行ったり、オンラインで試験問題の配布/回答提出などを行うこともできる。

デジタル教科書を活用した授業のイメージ(知識経済部)

2007年3月に推進計画および技術開発計画が立てられ、同6~10月には小学校5年生向けの9科目について、最初のデジタル教科書が開発された。同12月には同事業の研究用の学校15校が指定され、ここにタブレットPCや、液晶表示の電子黒板などを配布した。

これまでのデジタル教科書はMicrosoft Windowsが使用されていたのだが、2008年5月に立てられたデジタル教科書開発執行計画では、Linuxの使用が決定。これに伴い、試験運用する学校も全国20カ所を新たに拡大指定した。ここで配布されるタブレットPCは800台、電子黒板は20個に達する。

今回デジタル教科書のプラットフォームをLinuxに決定した理由は、韓国が推進している「公開ソフトウェア政策」が大いに関連している。

2004年に制定された同政策は、当時からMicrosoft一辺倒だったソフトウェア市場において、オープンソフトウェアの比重も高めることを目的としている。これにより優れたソフトウェア開発者の育成および核心技術の開発や、日中韓の国際協力を通じた技術開発などをもくろんでいる。

オープンソフトウェア普及のため、公共機関が率先してLinuxへの転換を図っているのだが、知識経済部によると、2007年時点で公共機関におけるLinuxサーバーの導入率は37.4%だという。同部によると「サーバー分野でのLinux導入率は世界平均を上回っているが、PC分野では低調」とのことで、公共機関以外への普及はまだまだのようだ。

そこでさまざまな方法による普及計画が考えられた末、デジタル教科書もその一環となったというわけだ。

知識経済部と教育科学技術部では、2008年のデジタル教科書へのLinux対応のため、30億ウォン(約2億9,550万円/1円=0.0985ウォン)を投資する予定だ。これによりLinux基盤のデジタル教科書用プラットフォームおよび学習用システムの開発、試験事業が行われる予定。デジタル教科書技術開発とオープンソフトウェア普及という、一石二鳥を狙った同政策が成功するかどうかは、デジタル教科書の使い心地や運用にもよるだろう。まだまだ試験段階とはいえ、大きな役割を担う政策である。