エアバッグやブレーキのロックを抑えるABSはもちろん、横滑りを防止するESCも広く普及してきた。次の安全技術は何だろうかと考えると、カメラで路面や前方を監視する画像認識技術が思いつく。プローブ情報などによる事前の危険察知も新しい。人ではできない領域を探り、人を支援するのだ。

カメラの目で人に見えないものを見る

つい先日モデルチェンジを行なったスバルのレガシィに搭載された「EyeSight」。今回のテクノロジー展でも大きく展示されていた。これはフロントグラス上方に取り付けられたステレオカメラの画像を解析し、車線や前方の車両、歩行者などをリアルタイムで判断するシステム。なにか危険が迫ればドライバーへの警告をはじめブレーキ制御を行なう。レーダーを使わず、ステレオカメラからの画像だけで、雪や雨の荒天時でもけっこうな確率で判断するというからすごい。

スバルの「EyeSight」に使われるステレオカメラ

「EyeSight」のカメラ部を車内から見た状態

カメラを使ったリアルタイム画像判断は前方ばかりではない。スズキのブースに展示されていた頭部姿勢追跡システムは、ドライバーの顔をカメラで追跡し、どこを見ているか、居眠りしていないかなどを判断する。これで安全運転を支援するわけだ。2台から3台のカメラを使用し、目や鼻、口元などの特徴点を利用して目や顔の向きを判断。合わせてドライバーがどこを見ているかのチェックを行なうため、前方もカメラでサーチする。

ダイハツは昨年のモーターショーで話題になった全方位事故回避支援システム(OPCS)を展示していた。クルマの全周360°をレーザーレーダーでセンシングし、歩行者を含む全ての障害物を検知する。例えば自車にぶつかりそうな車両やバイクを検知すると、その方向にあるLEDランプを点滅させるなどの警告を発する。会場では大きなモニターに上方からの映像を見せ、誰かが近寄ると検知して楕円で示されるようになっていた。同時に多くの人を認識している様が興味深い。

スズキの頭部姿勢追跡システム。ドライバーだけでなく、前方も認識する

ダイハツの全方位事故回避支援システム。○印が認識された障害物

部品メーカーもがんばっている

こういったカメラを使った安全支援装置は、なにも大手自動車メーカーだけが手がけているのではない。ワイヤーハーネスなどを製造している矢崎総業は、昨年8月に発売を開始した「AWS-3000」を展示していた。これはどのクルマにも取り付けられる、後づけの安全支援装置。カメラ(一眼)と本体、スピーカーのみというシンプルな構成ながら、前方の車両との車間距離や車線をリアルタイムで判断し、近づきすぎたり車線を外れそうになると警告を発してくれる。価格は10万円(税別)だ。

矢崎総業の「AWS-3000」これとカメラがセットになる

「AWS-3000」の紹介ビデオ。簡単なシステムで運転を支援する

アイシン・エィ・ダブリュは、高精度ロケーションによるブレーキアシスト技術を展示していた。これは今年2月にモデルチェンジしたクラウンに「ナビ・ブレーキアシスト」の名称で搭載されたもので、一時停止などでのブレーキ操作を手助けする。というと簡単そうだが、実は非常に高度な手順を踏んでいる。まずどこに一時停止線があるか判断しなければならない。カーナビと同じく地図情報を元にするが、GPSだけでは精密な自車の位置は判断できない。そこで車両後部に取り付けたカメラで横断歩道や車線などの情報を取り込み、自車位置を正確にマッピングするのだ。これでやっと停止線より手前での案内やブレーキアシストが可能になる。これはちょっとすごい。

アイシン・エィ・ダブリュのブレーキアシスト技術の展示

正確な位置判断で一時停止線までの距離を割り出す

衝突時に乗員を守るエアバッグは、いまや助手席やサイドまで搭載されているが、豊田合成はボンネットの前端までエアバッグを配したミニモデルを展示していた。これは衝突時に自車を守るものではなく、歩行者などの相手を保護するのが目的だ。通常はボンネットとボディの隙間に収納されるという。他のエアバッグは衝突のショックを検知して瞬時に膨らめば間に合うが、歩行者のためとなるとそれでは遅い。前方をセンシングして衝突する前に開かなければならないのだ。これはとても難しく、現在も開発中とのこと。リヤウィンドウ内部に開く後席エアバッグは後ろからの衝突に対応するもの。こちらは開発が終了しているとのことなので、間もなくいずれかのクルマに搭載されるはずだ。

最後は、関東自動車工業の4輪駆動車いす「Patrafour(パトラフォー)」。前輪が複数のおちょこのような駒で形成されており、それぞれの駒が回転することで左右へ曲がる仕組み。この機能のため、その場での回転もできる。狭い場所では重宝するはずだ。また、前車輪の向きが変わらないため、後輪の駆動をベルトで前輪に伝えることで4輪駆動を可能にしている。部品メーカーもがんばっている。

豊田合成の360°フルカバーエアバッグ

関東自動車工業の「Patrafour(パトラフォー)」