富士ソフトは12日、SaaSと仮想化市場へ本格参入するにあたり、両者を組み合わせた「FSサービス(SaaBIS)」の提供を10月1日より開始すると発表した。

SaaSおよび仮想化ビジネス全体で来期は25億円の売り上げを見込む

今回同社が発表したのは、SaaSに仮想化技術を組み合わせた新たなサービス"FSサービス(SaaBIS)"だ。"SaaBIS"とは「Software as a Business Innovation Service」を意味するSaaSの進化形。独立系ベンダである同社の強みを生かし、顧客の利用環境に応じた適切なソリューション選択や、これまで培ってきた組み込み技術を応用したユビキタス環境への対応、さらには同社のデータセンターをフル活用することにより、独自のワンストップソリューションを提供するというものである。

同社ではこれまでも仮想化サーバの構築・販売を行ってきたが、今後はシンクライアントソリューション事業の開始により仮想化ソリューションビジネスを大幅に拡大。SaaSおよび仮想化ソリューションビジネス全体における販売目標として今期が7億円、来期は25億円の売り上げを目指すという。

同社の副社長を務める堀田一芙氏は「SaaSが注目を集める一方で、同時にサーバの分散やコストの増大、セキュリティ問題などから仮想化技術を使った統合も進みつつあります。そこで当社では、データを海外に出すことなく安心して使え、なおかつすでに構築済みの基幹システムや膨大なデータベースを活用できる新サービスの提供に着手しました」と語る。SaaSに関する営業活動は本日より行われるが、サービス提供開始時期は10月1日を予定している。

富士ソフト 副社長 堀田一芙氏

シングルサインオンと追加型のアプリケーション

実際のサービス内容について、ソリューション事業本部 副本部長兼SaaS部長の間下浩之氏は「優れたSaaSアプリケーションを厳選し、1つに集めた"ベスト・オブ・ブリード"を採用しています」と語る。

富士ソフト ソリューション事業本部 副本部長兼SaaS部長 間下浩之氏

これは、ユーザーのID管理を行うシングルサインオンを入り口として、ブイキューブのWebセミナーおよびWebテレビ会議、インフォテリア・オンラインの表計算、デスクネッツのグループウェア、サイバーステーションのサイト管理などを提供するというもの。

「FSサービス(SaaBIS)」の概念図

「SaaBIS」における利用形態

なお、これらのアプリケーションは富士ソフトのデータセンターで稼働するが、今後は文書管理、稟議、勤怠管理、勤務割、会議議事録、携帯対応電子秘書、経費精算、ワープロ、セキュリティなども追加予定で、こちらに関してはすでにSaaSビジネスを行っている企業と組んでのハイブリッド提供も考えられている。

サービスに使用される秋葉原データセンターはブレードサーバに完全対応しており、使用可能電力が1ラックあたり7kVAの大容量電源設備、15台の空冷型床下空調機による大容量空調設備、災害に強いビル全体の耐震構造と二次免震装置、高速かつ安定性に優れた回線設備などが特徴。現在約200ラックが稼働中で、その他に同程度のスペースが1フロア分確保できるという。

秋葉原データセンターの概要

イニシャル費用込み3年間で8715万円の削減が可能

同社のSaaS導入による運用コストの経費削減効果は、社員数1000人の企業でメールとグループウェアを含む現行システムと比較した場合が1年間あたり2,265万円、イニシャル費用込みで3年間を比較すると8,715万円の削減が可能だという。

SaaS導入による経費削減効果

運用コストの目安としては、シングルサインオンなど基礎となる部分が1人あたり6,000円/年で、必要に応じてアプリケーションを追加していく形式となる。間下氏は「オフィス系のSaaSアプリケーションに関しては、1IDあたり4万円以上かけても良いという調査結果がありますが、当社のサービスではさらに大幅なコスト削減が可能です。削減した分の費用を本業に投入できるのはもちろん、仮想化技術を利用すれば業務系のコスト削減も行えるなど、顧客視点の提案を重視したサービス内容となっています」と語る。

グローバル展開も視野に入れたエム・ピー・テクノロジーズとの業務提携

また、同社では仮想化ビジネスへ本格参入するにあたり、5月19日に同社内にシンクライアントソリューション検証センターを設立する。この検証センターには最新のブレードサーバ、ラックマウントサーバ、ストレージ、ネットワーク機器、多様な仮想化ツールなどが配備され、最新技術の検証が行われる予定だ。

また、6月からは社内に300台のシンクライアント端末を導入し、社内のセキュリティ向上および営業の機動力アップ、顧客導入時における事前検証や利便性の向上などが図られるという。

さらに本日、今回の新サービス提供にあたりエム・ピー・テクノロジーズと業務提携契約を締結したことも発表された。富士ソフトではエム・ピー・テクノロジーズからシンクライアントソリューションの技術やノウハウを吸収、エム・ピー・テクノロジーズは富士ソフトの営業ネットワークによりシンクライアントソリューションの販売網を強化する。なお、業務提携する事業領域はシンクライアント仮想化事業から開始し、映像配信事業、グローバル展開へと進めていくという。