Tim Bray氏

XMLの第一人者として知られるTim Bray氏は、現在Sun MicrosystemsにおいてWebテクノロジーズディレクターとしてWeb関連技術の仕様策定や開発に携わっている。米国サンフランシスコで6日(現地時間)より開催中の2008 JavaOne Conferenceでインタビューに応じたTim Bray氏は、RubyやPythonをはじめとした動的言語に対する同氏の思いやSunの取り組みについて語った。

ちなみに同氏はこれらの言語をあえて"高級言語(High Level Langage)"と表現している。Rubyなどの言語は一般的に"スクリプト言語(Scripting Langage)"と呼ばれることが多い。しかし実際にはすでにスクリプト言語の枠に収まらず、ビジネスレベルでの利用に耐える高い機能とパフォーマンスを備えているため、同氏はC++やJavaと同列に並ぶ言語として位置付けているからだ。この一点からも同氏のこれらの言語に対する思い入れの強さが伝わってくる。

Tim Bray氏がRubyとそのJVM上の実装であるJRubyを強く推薦してきたことは有名だが、同氏はPythonやPHPといったその他の言語についても同様に高いポテンシャルを持っていると語る。特にPythonについては、Sunが今年2月にPythonの開発者であるTed Leung氏とJython(JVM上のPython実装)の開発者であるFrank Wierzbicki氏をフルタイムで雇用した件に触れ、Sunによるサポートを強化していくことを強調している。

同社には、2006年にJRubyの開発者を雇用して以来、同実装の開発を積極的に牽引してパフォーマンスの大幅な改善を実現してきたという実績がある。JRubyは今やRubyにとっても魅力的な実行プラットフォームへと成長している。今後はPython/Jythonにおいても同様に開発を牽引していく予定のようであり、Tim Bray氏の発言もそのことを裏付けている。

Tim Bray氏は従来より、これからは多言語の時代だと主張し続けている。その中でRubyやPythonに代表される動的言語は現在のメインストリームを形勢していると言っていいだろう。同氏は、代表的な動的言語であるRuby、Python、JavaScript、PHPを比較し、それぞれに対して以下のように評価している。まずこれらの言語の中でJavaScriptは少々特殊な存在だと指摘する。「現在、JavaScriptはAjaxのための言語として広く使われており、言語自身というよりはAjaxの評価になってしまう。この新しいデザインスタイルを考慮すればJavaScriptは非常に素晴らしい言語だと言える」(Tim Bray氏)

PHPについてはFacebookやWikipediaなどでも採用されているように非常に多くのユーザがいる点を挙げ、「リスペクトすべき言語だ」と述べている。実際、PHPによる開発は非常に容易であり、パフォーマンスも良い。SunもPHPをサポートすることの重要性を認識しており、同社が推薦するNetBeansでは次期バージョンからPHP開発がサポートされる。一方でTim Bray氏は「PHPには2つの点で大きな懸念がある。ひとつはセキュリティが弱いこと。もうひとつは一度書いたコードのメンテナンスが困難な点だ」とも指摘している。

RubyとPythonについては非常によく似た存在でそれほど大きな違いはないという認識だそうである。どちらも開発が容易な非常に優れた言語であり、セキュアでメンテナンス性も良い。その上でTim Bray氏はRubyについて特筆すべき点としてコミュニティの存在を挙げている。「コミュニティはテクノロジを評価する上で非常に重要なポイントだと考えている。RubyおよびRailsのコミュニティは非常に大きく、そしてフレンドリーだ。Rubyを始めようとしたときや、何かわからないことがあったときには、すぐに良いアドバイスをくれる」(Tim Bray氏)

RubyとPythonはいずれもC言語による実装が提供されているが、これについてはCRubyよりもCPythonの方を高く評価しており、「CPythonは非常にストロングでパフォーマンスが高く、Web開発性も良い。C実装についてはPythonの方にアドバンテージがある」と指摘している。

もっともTim Bray氏個人はというと、これら同種の言語の中ではやはり「Rubyが一番好き」だと語っている。もちろん同氏はRubyがパフォーマンス上の問題を抱えていることも認めており、改善すべき課題だと指摘している。この点についてはSmalltalk VMをベースとして高いスケーラビリティの実現を目指したRubyランタイム「MagLev」などのプロジェクトも進められており、大いに注目しているという。