このような提携のうち、とくにヒュンダイ・キア自動車とは具体的な話が進められているようだ。

ヒュンダイ・キア自動車およびMicrosoftは、両者の戦略について過去約2年間に渡って話し合いを進めてきたという。その結果、推進することが決まっているのが、Microsoftが次世代車両のソフトウェアプラットフォームを開発し、これを活用した「Infotainment」システムを開発することだ。

これはPCや携帯電話、音楽機器などを通じて楽しむデジタル生活を、車内も含むどこでも可能にするという事業だ。Infotaimentを体験できる新しいPC形態の機器を車両に搭載し、車内でコミュニケーションやエンターテインメントコンテンツも楽しめるようにする方針だ。

また、テレマティクスをはじめとした車両用サービスや、インターネットコンテンツの車内での活用のための中長期的な協力プログラムも検討することとなった。これに従い2010年には、北米市場をターゲットとした次世代オーディオシステム開発を行い、その後韓国や欧州市場に適用範囲を広げる計画でもある。

最初に開発されるオーディオシステムでは、携帯電話やポータブル音楽プレーヤーなど、各種モバイル機器と車両間をつなぎ、全てを音声認識で制御できるようにするという。また、次世代オーディオはタブレットPCと類似したもので、ソフトウェアの更新により機能をアップグレードさせることが可能となる。

09年初期からは、世界の主要モーターショーなどで、両社共同開発による製品を公開していく予定だといい、今後両者の動きが目に見えて活発化してくることが見込まれる。

>

ヒュンダイ・キア自動車とMicrosoftの覚書締結式。左からMicrosoft自動車事業部総括のMartin Thall氏、Microsoft会長のビル・ゲイツ氏、ヒュンダイ・キア自動車社長のチョン・ウィソン氏、ヒュンダイ・キア自動車研究開発本部社長のイ・ヒョンスン氏

情報格差解消に一助

ゲイツ会長は、ソウル市のオ・セフン市長とも会談を行っている。ここでMicrosoftとソウル市は「情報格差解消相互協力のための覚書」を締結した。

覚書を通じて両者は、教育環境の改善、低所得層の情報格差解消、クリーンなソフトウェア環境の助成といった3つの事業を推進することとなる。

この事業により両機関では、学校に通えない低所得層の子どもに、インターネットを通じた教育機会を与えたり、Microsoftのソフトウェアが搭載されたPCを寄贈したりする。またソフトウェアの著作権保護を進め、不法複製などをなくす事業も進めていく予定だ。

じつは今回、ゲイツ会長は数時間しか韓国に滞在しなかった。その間に演説を行い、接見をこなして契約の締結を行った同氏の影響力は非常に大きいと感じざるを得ない。2008年夏には一線から退くと宣言している同氏だが、その前に韓国において影響力を行使するという大きな仕事を成し遂げたといえる。