COOL Chips XIにおいて、NECは"Ethernet Bridge Chip for I/O Virtualization with Throughput Enhancement"と題する論文を発表した。複数のサーバのそれぞれにI/O装置を用意するのは無駄が多いので、サーバとI/O間をEthernetで接続して、仮想化したI/O共有を可能とするEthernetスイッチチップを開発した。このチップは、混雑状態をモニタしながら、遅延が過大にならないようフローを制限する機構とデータのプリフェッチを行う機構を持たせることにより、I/O接続に必要な性能を確保している点に特徴がある。

英Wolfsonは"Reducing the Power Consumption of Mixed Signal Audio Codecs"という論文を発表した。2002年には27mWの電力を消費していたオーディオコーデックを、どのようにして2008年には4mWまで省電力化したかという論文である。ディジタル部分は微細化に伴う電源電圧の低下による省電力化が可能であるが、アナログコア部やヘッドフォーンのドライバなどのアナログ部分は電圧の低下が困難である。これに対して、アーキテクチャの見直しで必要なOPアンプの数を削減し、さらに、動作しないブロックの電源制御や動作状態に応じてきめ細かくバイアス電流を制御するなどの手法の組み合わせで、2002年には11mWを消費していたアナログコア部の消費電力を2.5mWまで削減している。また、ヘッドフォーンドライバもD級やG級のアンプを使うことにより省電力化し、合計で4mWという低消費電力を実現している。

ルネサス テクノロジは、ISSCC 2008でテクノロジ中心の発表行った、コアごとに電源制御が可能な8コアチップについて、並列化コンパイラを用いたAACデコーディングの性能スケーリング結果とデバグ用の実行状況出力機構についての発表を行った。笠原教授の基調講演で発表された並列化コンパイラを用いて、8コアでは1コアの5.8倍の性能が得られたという。そしてアイドルとなるコアをきめ細かく電源オフとすることにより、2.37Wの消費電力を0.71Wに低減したと報告された。

また、東芝もISSCC 2008でテクノロジ中心の発表行った、8コアのMePを集積したマルチメディア処理チップに関して、システム的な側面を強化した論文を発表した。各コアはMePコアに8KBの命令キャシュと8KBのデータキャッシュをつけた構成であり、8コアをリングバスで接続している。そして全体に512KBのL2$を設けている。このチップに実装されたソフトウェア制御のキャッシュコヒーレンシを補助する機能や、省電力機構などが報告された。