――原作の『アップルシード』は未完の大作と言われていますが、それを新たにオリジナルとしてストーリーを構築、新しいものを見せる……『エクスマキナ-APPLESEED SAGA-』であれば、どういった『アップルシード』=世界観を出そうとしましたか?

「『アップルシード』は士郎さんの商業デビュー作として、その後の作品につながる要素がすべて入っているようなところがありますので、何にフォーカスするのか? というのが悩ましかったりもするわけです。オリュンポスという理想社会を作ろうとしている思想的にも新しい先進的な街があって、人間を統治するためにクローンが存在している。さらにサイボーグも暮らしている非常にハイブリッドな人種構成がすごくおもしろいと感じました」

――3者が違和感なく共存していますからね。

「それがうまく作品の中に盛り込まれているのが『アップルシード』という世界の醍醐味だろうと思います。主人公の女性は人間だったり、恋人はサイボーグであったり、それにバイオロイド――その3つの種を代表するような3人が織り成す話というのが『アップルシード』のテーマ足りうるんじゃないかということで、今回そういった話を軸に置いたんです」

――ストーリー中、キーワード的に「3人がこの世界を~」というセリフが出てきますよね。

「そこは脚本家とすごいやり取りしましてね、どうしても入れてくれってリクエストして、あのセリフが入ったわけです。オリュンポスっていうのは、あの3人が象徴しているんだっていうことでね。違った成り立ちを持つ3つの存在が共存する世界だってことがうまく伝わればいいなと思っていました」

――劇中では世に広まった便利なツールによって、危険になる可能性もありえるといったWinny関係の事件を連想させるような警鐘的な描写もありますね。

「Winnyっていうのはかなりイメージの元になっていますね。Winnyと携帯をミックスしたような形で、いつの間にか自分たちの生活に入ってきて、あること自体意識しなくなったアイテムとしてあの端末を設定したんです」

――便利なツールが、あることをきっかけに自分に矛先を向けてくると。

「そういうものを象徴的に見せたかったという思いはありましたね」

――暴動を起こす人々の動きを見ていると、ロメロ(映画『ゾンビ』の監督)作品のオマージュだなあと思ったんですけど。

「いや、いろいろ考えたんですけれど、どうしてもゾンビっぽくなっちゃうよね、ということで最後は開き直りました。逆にそれで楽しいよ、と言われたりするので、それはそれで良かったのかもと思っています(笑)」

――その大群衆の描写で、あえてひとりひとりに別の動きを与えていますよね。そういった動きを含めて、フルCGアニメというのは実写より手間がかかると思うのですが。それをあえてフルCGアニメで表現したというのは?

「これはよく言われるのですが、CGにすることによってハードルが高くなったりすることがあるんですよ。役者さんが演じることに対しては見ている人は疑問を持たないんですけれど、CGにすることによってアラ探しをしちゃうんですよね。そういった怖さはあります。自分でも作業しながら、『なんでこんな手間のかかることやっているんだろう?』と思うときがよくありました(笑)。でもCGじゃないと表現できない描写っていうのも確実にありますからね」

――『エクスマキナ-APPLESEED SAGA-』の実写化は考えなかったと?

「仮にハリウッドの有名女優が演じてくれたとしても、僕はこのまま(フルCGアニメ)のほうがいいでしょう! と言えるものにしたいな、といつも心掛けて制作していました。実際に実写で、というお話もあるみたいですが、私からすれば『やれるならやってみろ』ぐらいの気概で作っているつもりなんですけどね(笑)」