International Herald TribuneやNew York Timesなどの一部海外報道は、独Bertelsmann傘下のRandom Houseが、オンライン百科事典「Wikipedia(ウィキペディア)」の書籍化を進めており、今年9月にドイツ国内での発売が予定されていることを明らかにした。

同報道によれば、世界で初めて書籍化されるウィキペディアは、約1,000ページ構成の1巻からなる「The One-Volume Wikipedia Encyclopedia」となる予定で、販売価格は19.95ユーロ(約3,280円)に設定される見込み。初版は2万部印刷の予定で、市場での反響を考慮に入れつつ、年鑑スタイルで毎年新版を出版していく計画も明らかにされている。

ウィキペディアは、Wikiを利用して作成されるため、"だれでも自由に記事の執筆・編集に参加可能となる、無料のオープンな百科事典"として、世界各国で利用者数を伸ばしている。その一方、だれもが編集できるゆえに、情報の信頼性に関しては疑問を差し挟まれることも多い。Random Houseは、書籍化に当たっては、オンラインで公開されている情報の正確さなどをチェックする方針で、掲載情報も厳選されることになるという。

また、The One-Volume Wikipedia Encyclopediaの読者層としては、従来の百科事典購入者層よりも、かなり若い年齢層が想定されているようだ。プレイステーション3などの最新製品サービス、仏大統領のNicolas Sarkozy氏が前妻と離婚後に結婚した、元ファッションモデル歌手のCarla Bruni夫人を始めとする最新時事問題、ドイツ国内市場の最新メディアランキングといった、これまでの百科事典には掲載されていない新情報を中心にトピックを厳選して、今後の書籍化が進められるとされている。

なお、掲載情報を利用して、書籍化によるビジネスが展開されることに関して、ウィキペディアの運営管理を手がけるWikimedia Foundationの側は、基本的に承認の方針で動いているとの報道がなされた。Random Houseは、The One-Volume Wikipedia Encyclopediaの販売において、1部ごとに1ユーロ(約164円)を、Wikimedia Foundationに寄贈することで合意に至ったとも伝えられている。

Wikimedia Germanyの事務局長となるArne Klempert氏は、今回の件に関し、一部海外メディアの取材に応じて、「これはお金の問題ではない。無料でオープンな知識が有するパワーを示す上で、非常に良い例であると考えている。ウィキペディアのコンテンツは、だれでも自由に用いることができ、それを用いてどんな興味深いことでも成し遂げることができる」と語ったとされている。