3月27日から30日までの4日間、東京理科大学森戸記念館においてアジアにおける*BSD国際会議Asia BSD Conference 2008(AsiaBSDCon 2008)が開催された。AsiaBSDCon 2008は日本では2007年に引き続き2度目の開催、アジアでは台湾での開催も含めて3回目の開催となる。昨年来日したコミッタも再び来日し、昨年よりも打ち解けた雰囲気でカンファレンスが運ばれた。

AsiaBSDCon 2008は東京理科大学森戸記念館で開催

FreeBSDを支援する非営利法人であるFreeBSD Foundationは、2008年度の予算計画を昨年よりも引き上げた。特にカンファレンスの開催支援や渡航補助費用などの項目が増額されており、2007年よりも積極的にこうした国際会議を支援する旨を明確にしている。AsiaBSDCon 2008もFreeBSD Foundationが資金援助している。これは同組織がカンファレンスがFreeBSDの開発を促進すると認識しているためであり、その旨を含めドネーションへの理解を求めていることを意味している。

有志によって開催されてきた*BSD国際会議だが、ここ数年はカナダで開催されるBSDCanと欧州で開催されるEuroBSDConが毎年定例的に開催されるようになっており、デベロッパの間でも意見のやりとりや直接議論をもつ重要な機会だととらえられている。特にBSDCanではコーディングナイトも開催されるなど、実際に開発を進める場としても意味を持っている。

こうした中でアジア太平洋地域において定例的に同レベルの国際会議を開催していくことは、欧米のデベロッパと日本のデベロッパ、ユーザの間で意見を交換し、認識を新たにするという点できわめて有益だ。AsiaBSDConを継続していくことはその点で価値がある。たとえば日本からFreeBSD開発への参加はときに「Open Block System」と揶揄されるように他の参加者とは違う側面が強い。それほど意見のやりとりがないのだが、一気に成果物があがってくるというやり方だ。おもに言語の壁や文化の違いがこうした状況を生み出しているわけだから、直接交流が持てるこうしたカンファレンスがもたらす効果は大きい。

BIND8からBIND9へ移ろうという意志をうながすピクチャー

AsiaBSDCon2008はFreeBSD 7.0が公開されてから初のカンファレンスということもあり、その点でも興味深いものとなった。高負荷時ピーク性能が1500%改善されたという刺激的なアナウンスがおこなわれただけに、その真意や背景を知るために直接コミッタから話が聞けるのは貴重な機会だ。ドキュメントから得る知識と直接開発者と話をするのとでは、実感としての理解が違ってくる。

また*BSDカンファレンスでは、FreeBSD、NetBSD、OpenBSDのコミッタがお互いの取り組み内容などを把握するうえでも有益な場となっている。お互いに刺激となる発表も多く、また成果を取り入れるための情報収集という点でも役に立っている。それになによりも、開発者通しの交流が持てるという点が大きい。

東京理科大学森戸記念館入り口風景 - 風光明媚な雰囲気とハイテクが入り混じったデザイン

AsiaBSDCon 2008で発表された内容に目を向けると、新しさという点でNetBSDデベロッパであるAntti Kantee氏によって発表された"Send and Receive of File System Protocols: Userspace Approach With puffs"、FreeBSDデベロッパであるRandall Stewart氏から発表された"Reducing Lock Contention in a Multi-Core System"、現在開発中であるとしながらもNetBSDデベロッパであるJörg Sonnenberger氏によって発表された"Sleeping Beauty - NetBSD on Modern Laptops"が興味深いものだった。

特にパワーマネジメントフレームワークを実装してsuspend-to-RAMなどがちゃんと動作するように改善しようというJörg Sonnenberger氏の取り組みは興味深い。同取り組みが成功した場合、ほかの*BSDにも実装モデルの成功例として導入される可能性がある。puffsはユーザランドファイルシステムフレームワークとして注目すべき実装だし、FreeBSDにおけるロックコンテンションの削減方法について言及したRandall Stewart氏の発表も興味深いものだった。

来年の3月、2009年3月にも次期カンファレンスとしてAsiaBSDCon2009の開催を予定している。*BSD関係者は参加を、同OSを採用している企業はぜひ支援の検討をしてみてほしい。

※毎日コミュニケーションズはAsiaBSDCon2008メディアスポンサーです。