ワンセグチューナーと言えば、一時期ほどのブームは過ぎたものの、さまざまな機器に搭載されまだまだ人気の製品ジャンルである。パソコン向けのワンセグチューナーも各社が競って製品を投入しており、ただ観れる・撮れるだけでは差別化が難しくなってきている。そんなワンセグチューナーのなかで異彩を放つのが、今回取り上げるエルザジャパンの「Telebit」。SDIOを利用するユニークな製品だ。

SDIOを採用したエルザジャパンのワンセグチューナー「Telebit」

まずSDIOが何なのか、ということから確認しておこう。SDIOとは、SDカードのインタフェースを拡張カード用として利用する規格である。パソコンはもちろん、より小型なPDAや携帯電話・PHSへの機能拡張で主に用いられている。これまで登場しているSDIOカードとしては、PHSモジュールやBluetooth、無線LAN、GPS、カメラなど。そしてTelebitがワンセグチューナーである。

このSDIOという規格だが、たとえば既存のSDカードスロットの全てで利用できるわけではない。SDカードスロット(ホスト)がSDIOに対応していることが必須だ。最近のノートパソコンやPDAは多くがSDIOに対応しているものの、やや古い機種に関しては要確認。Telebitを利用する場合、まずはエルザジャパンのホームページにある動作確認済みリストを参照しよう。USB接続のメモリカードリーダーなどを利用する場合も、SDIOに対応しているかどうかは要確認だ。

前置きが長くなってしまったが、Telebit本体をチェックしてみよう。Telebitの本体サイズは33.5(幅)×55.0(長さ)×8.0(厚み)mm。この数値だけで見てしまうとUSB接続型のワンセグチューナーと変わらないと思えるかもしれない。だが、実際にノートパソコンで使ってみると確かに小さいのだ。

取り外した状態ではUSB接続のワンセグチューナーと比較してサイズ的メリットは少ないように思えるが……

Telebitは使用時のサイズが小さい、その理由はインタフェースにある。一般的なノートパソコンのSDメモリカードスロットは、そのスロット機構にプッシュ・イン・プッシュ・アウト方式あるいはプッシュボタン方式が多く採用されているが、これはSDメモリカードをスロットに押し込むと、カード全体がスロット内に収まる。このタイプのスロットにTelebitを差し込むと、SDカードの長さぶんである約32mmがスロットに隠れることとなる。パソコン本体から飛び出ている部分は約23mだ。対してUSB端子(いわゆるA端子)でスロットに隠れる部分の長さは約12mm。仮にTelebitと同じ長さの製品があったとした場合でも43mmほどが飛び出ることとなる。こうした理由から「小さい」と言えるのだ。

実際に装着してみると、"飛び出る部分がすごく小さい"わけだ

こちらが比較用のUSBワンセグチューナー

やや奥まった位置のスロットにも装着可能

また、アンテナはというと、本体内蔵アンテナがひとつに、ほかロッドアンテナとテーブルアンテナが付属し、この3つから感度に応じて選ぶことが可能だ。Telebitのチューナー部分には、小さなアンテナ用コネクタがあり、この部分にアンテナを差し替えて利用する。モバイルの際には内蔵アンテナか感度重視でロッドアンテナ、自宅ではより感度の高い部分を求めて引き回せるケーブルアンテナを利用すれば良いわけだ。

ロッドアンテナを装着した状態。ロッドは最長17cmまで伸びる

本体内蔵アンテナ、ロッドアンテナ、ケーブルアンテナの3タイプを選んで利用可能

ところで、ワンセグを自宅内で使う場合、地域によってはモバイル向けのアンテナでは受信しづらいこともある。けっこうな確率で宅内アンテナ用のF型同軸変換ケーブルが欠かせないのではないだろうかと、郊外丘陵地に住む筆者は思う。先ほど紹介したとおりTelebitに同軸変換ケーブルは付属しない。そこで、手持ちのワンセグ機器の変換ケーブルを流用できないものかと見比べた結果、手持ち3つの製品それぞれがそれぞれ異なる端子を用いていることに気付いた。ワンセグチューナー全般に言えることだが、製品付属アンテナの紛失には注意が必要だ。

アンテナ端子はF型を小さくしたような形状。他社ワンセグチューナーに付属の同軸変換コネクタを試してみるも内径が合わずに断念した。些細なところだが器機メーカーが連携して統一規格を作るというのは望めないものだろうか

導入手順は他のPC向けワンセグチューナーと同様

Telebitが対応するOSはWindows VistaおよびXP(ともに32bit)。SDIOに対応したスロットにTelebitを差し込むと、OSはTelebitを自動認識する。この流れはUSB器機のプラグアンドプレイと同様だ。Telebitを認識した後は、付属する8cm CDからドライバを当て、そしてソフトウェアを導入する。この導入部分は他のPC向けワンセグチューナーと全く同じである。

SDIOスロットにTelebitを差し込めば自動認識される

ドライバとソフトウェアを導入

Telebitに付属する視聴・録画ソフトウェアは「INFO.TV Petit」。どうやら「Petit」というところがワンセグ用であることを示しているらしい。INFO.TV Petitを起動すると、まず初回にチャンネル設定が起動するので、受信感度の良い状態でスキャン、あるいは手作業で設定していけばワンセグ視聴の準備は完了する。

まずはチャンネル設定

INFO.TV Petitは、左右2ペインのソフトウェアで、左はテレビ画面とその下に番組再生時のコントロールボタン、右はタブ切り替えでチャンネル、番組情報、録画済みコンテンツ(ビデオ)のブラウザとして機能する。このタブ切り替えというUIは視覚的にもわかりやすく感じた。チャンネル表示は、受信出来ている場合、放送中の番組タイトルが表示される。視聴中の番組をボタンひとつで録画したり、タイムシフト再生などもコントロールボタンから可能だ。番組表はチャンネル毎の表示で、そのうえにある「ch」ボタンで切り替える。そして録画したビデオはタイトルと録画日時で管理されている。例えば上級者になるともう少し詳細な情報が欲しくなるかもしれないが、まずワンセグを試してみようという初心者層にはINFO.TV Petitのシンプルな表示情報は取っつきやすいものと思われる。

チャンネルは各放送局名と現在放送中のタイトルが表示される。ちなみに、ウインドウ左上には携帯電話同様の受信感度を示すアイコンが表示される

番組表は各チャンネルごとの時系列で表示される

ビデオは録画した番組タイトルと日時で管理。新しく録画した番組にはNEWのマークが付けられる

録画はコントロールボタン左隅の録画ボタン、あるいはiEPGとなる。iEPGの場合はインターネット接続が必須。テレビ画面を右クリックして現れるポップアップから、「番組表を表示する(web)」を選ぶと、自動的に番組表サイト「Gガイド.テレビ王国」(標準)に接続し、番組表のiEPGボタンから録画予約が登録される。なお、録画予約時には、INFO.TV Petitを終了させ、かつPCの電源を落とさないことが必須だ。スタンバイ/休止状態からの復帰録画にも対応している。つまり、ワンセグチューナーとして一通りのことは全て対応していると言っていい。

iEPG番組表からの録画予約も可能だ

番組表サイトや録画ファイルの保存先なども変更できる

出っ張りの少なさはモバイルで重宝。SDカードスロットの有効活用としても

Telebitのメリットはなによりも形状にあると思う。まずは装着時の小ささ、出っ張りの少なさ、つまりスマートさだ。スマートに装着できるTelebitは、よりモバイルに向いているのではと感じる。ただTelebitはインタフェース部分が薄いため、PCから取り外して持ち運ぶ際は別の袋に入れるなど大切に扱った方が良いだろう。

もうひとつはSDIOという規格だ。ノートパソコンにおいてメモリカードリーダーの搭載率は高い。ただしやや古めのノートブックとなるとSDHCに対応していない。そこで内蔵のカードリーダーではなくSDHCに対応したUSB接続のカードリーダーを用いるということもよくある話だ。そうして空いたSDカードスロットがもしSDIOに対応しているのならば、インタフェースの有効活用、より重要度の高いUSBポートを空けておく、という視点からTelebitのようなSDIOカードを積極的に利用する動機が生まれるわけだ。

ちなみにこのTelebit、発売当初よりWindows Mobile 5への対応が予定されていたが、これも先日、正式に発表されている。PDAで利用する場合、対応ソフトウェアを別途ベクターよりダウンロード購入する必要があるほか、録画機能無し、320×240ドットという解像度の指定があるようだ。Telebitの「小ささ」を最大限活用するにはむしろPDAの方が適していると思われる。より多くの製品に対応してくるとまた製品を見る目も変わってくるだろう。