半導体商社の丸文とFreescale Semiconductorは11日、共同で栃木県宇都宮地域の自動車メーカーならびに自動車部品メーカーにおける自動車アプリケーションの開発を支援する取り組みを開始したことを発表した。

丸文では、既存ビジネスの効率化のほか、新規ビジネスの創出を行うことにより、リスクマネジメント体制の整備を進めることを核とし、エレクトロニクス商社としての新基盤を構築することを目指す中期経営計画「Value UP Plan」を策定している。安定した成長基盤を確立する上で、カーエレクトロニクス市場へ向けた販売体制の強化は重要な位置を占めるという。同社専務取締役 営業統括担当の佐藤誠氏は、「環境負荷の少ない低燃費自動車や電気自動車の実現のためには、エレクトロニクス技術が鍵になる。当社の事業の発展もそうした分野に進出することが重要になっていた」と語る。

丸文 専務取締役 営業統括担当 佐藤誠氏

同開発支援の拠点となるのは、丸文が2007年10月に開設した宇都宮事務所。同事務所は、今回の取り組み開始にあたり、開発支援のための設備などを導入、名称を「宇都宮カーエレクトロニクスオフィス(宇都宮CEオフィス)」へと変更した。同オフィスの開設にあたり、佐藤氏は「カスタマに対し、24時間のサポート体制や製品の安定した供給、高い信頼性や安全性の提供が可能になる」と、その効果を語る。

同オフィスでは、丸文のFAE(Field Application Engineer)およびFreescaleのエンジニアにより、エンジンやトランスミッション系の「パワートレイン(駆動系)」、エアバッグシステムを中心とした「セーフティ」、カーナビゲーションシステムを中心とした「インフォテイメント」の3つの領域に向けたソフトウェアとハードウェアの開発支援が行われるほか、ソフトウェアのトレーニングや最適なソリューションの提案などが行われる。

宇都宮CEオフィスの機能と丸文とFreescaleの役割

具体的には、パワートレイン分野では単にマイコンを提供するだけでなく、「ソフトウェアのプラットフォーム開発をカスタマと共に行っていく」(フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン オートモーティブ セールス&マーケティング本部 ジェネラルマネージャー 林章氏)。また、エアバッグでは、Freescaleのバス技術「DSI(ディストリビューテッド・システム・インタフェース)」を用いることでワイヤハーネスを置き換えながらも複雑なシステムを構築することが可能になるとし、そうした技術を用いたアプリケーションの開発をサポートし、開発期間の短縮などを実現したいとした。

フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン オートモーティブ セールス&マーケティング本部 ジェネラルマネージャー 林章氏

また、Freescaleでは、同社の仙台デザイン開発センターにおいて製品開発および不良解析、東京本社の技術部門において開発支援、名古屋品質テスト・センターにおいて初期解析を行うことで、支援体制を万全なものにするという。

Freescaleの上席副社長でフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンの代表取締役社長である高橋恒雄氏は、「(カスタマの)近くにサポートする場所があれば、カスタマは後顧の憂いなく安心して開発に専念することが可能となる」と同オフィスの開設の意義を語ったほか、「宇都宮のGDPを少しでも上げることに貢献できれば」と同オフィスの開設が地域の発展につながるとの見方を示した。

Freescale Semiconductor上席副社長兼フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン 代表取締役社長 高橋恒雄氏

また、Freescaleの上席副社長兼Freescale EMEAおよびグローバル・オートモーティブ・マーケティング責任者であるデニス・グリオット氏は「当社のDNAの中には車載半導体というものが息づいている」とし、車載用マイコンのみならず、各種センサ、ネットワークデバイス、アクチュエータ制御のためのスマートパワー製品など幅広い製品を展開していることを強調した。また、「日本の自動車メーカーの実力は世界的に見ても高い」と世界における日本の自動車市場の注目度が上昇していることにも言及、「宇都宮CEオフィスの開設は、そうした注目の市場に対して重要な意味を持つ」とした。

Freescale Semiconductor上席副社長兼Freescale EMEAおよびグローバル・オートモーティブ・マーケティング責任者 デニス・グリオット氏

なお、現在、同オフィスには2名のFAEが常駐しているが、今後のカスタマの要望次第で適宜規模を拡大していくとしている。

左からデニス・グリオット氏、高橋恒雄氏、佐藤誠氏、丸文 常務取締役 デバイス第2事業部長 堀内洋氏