日本IBMは6日、企業における情報戦略の実現を主なテーマとした顧客/ビジネスパートナー向けカンファレンス「IBM Information On Demand Conference 2008」を開催した。IBMでは情報基盤のあるべき姿として「インフォメーション・オンデマンド (IOD: Information On Demand)」を提案している。これは、企業内に散在するさまざまな情報を、必要とする人や業務アプリケーションがオンデマンドで活用できるようにするという構想。

同カンファレンスの基調講演では、「Information On Demand (IOD) の全貌! 情報基盤のあるべき姿が見えてくる」というタイトルで、米IBM インフォメーション マネジメント担当 バイス プレジデントを務めるMark Register (マーク・レジスター) 氏が、同社のインフォメーション・オンデマンド構想やそれを実現するためのソリューションなどについて語った。

米IBM インフォメーション マネジメント担当 バイス プレジデントMark Register氏

Register氏はまず、世界の企業における新規システム投資の焦点について触れ、従来の"自動化"から、ここ2年間で徐々に"最適化"へ移行してきたと指摘した。すなわち、従来は業務システムによってビジネスをいかに自動化するかということが競争力を高める上で重要であったのに対し、これからは情報を活用することでいかにビジネスを最適化するかが鍵になってくるということである。

さらに「企業の持つ情報は大抵が分断されており、その量は多様で膨大だ。それに対してビジネスのスピードは速くなるばかり。したがってこれからは、いかにして情報のビジネス価値を的確に引き出して競争優位を獲得するかが主な課題となる」 (同氏)と語った。

その課題に対してIBMが提唱しているのが、今回のメインテーマであるインフォメーション・オンデマンドである。Register氏はインフォメーション・オンデマンドを実現するためにはいくつかの段階があると指摘する。

まず第1に、データとコンテンツを的確に管理し、そのライフサイクルを通じてプロセスの一環に組み入れることだ。データ管理、コンテンツ管理のソリューションによってこれは実現される。第2に、正確で信頼できるビューを構築し継続的に管理していくこと。これには既存資産を活かすための柔軟なアーキテクチャが必要となる。第3に、情報の活用から現状を的確に把握し、ビジネスを最適化すること。ここではビジネスインテリジェンス (BI) やパフォーマンス管理が重要な役割を果たす。

IBMの提唱するインフォメーション・オンデマンド構想

これらの各段階に対し、IBMは各種ソリューションによって強力に企業をサポートしていくとRegister氏は述べ、次のように語った。 「IBMでは、従来よりインフォメーション・オンデマンドに対する投資を続けてきた。最近では2007年にコグノス社を買収したことにより、BIおよびパフォーマンス管理の分野においてより一層の価値を提供できるようになった。IBMではビジネスの全般に渡るEnd to Endのソリューションによって、顧客が情報の真の価値を引き出すサポートをしていく」。

講演の後半では、米IBM ソフトウェア グループ インフォメーション マネジメント ワールドワイド セールス バイス プレジデントのBob Picciano (ボブ・ピッチャーノ) 氏が登壇し、インフォメーション・オンデマンドに対する具体的なIBMの取り組みを導入事例を交えて紹介した。

米IBM ソフトウェア グループ インフォメーション マネジメント ワールドワイド セールス バイス プレジデント Bob Picciano氏

Picciano氏はまず、市場におけるテクノロジーの購入形態が大きく「個別の製品としてのソフトウェア」「完全なシステム」「ソフトウェアと専門知識」という3つのパターンに分けられると指摘した。そして、IBMではどのパターンに対しても最適なソリューションを提供していると強調する。 その上でPicciano氏は、Register氏が挙げたインフォメーション・オンデマンドのための各段階に対する具体的な事例の紹介を行っている。例えば、台湾の保険会社PCALife Assurance社では、これまで紙ベースで扱ってきた保険証券情報をプロセスの一部として取り込むことにより、顧客サービスの最適化を実現したという。これはコンテンツ管理の成功事例であり、中心にはIBM ECM (Enterprise Contents Management) がある。

IBM ECMでは、コンテンツをビジネスプロセスの一部としてライフサイクルを通して管理できるという。さらにIBMでは、2008年に従来のECMソリューションに加えて新たに「IBMコンプライアンス・ウェアハウス」の提供を開始する。これは知的に制御されたアーカイブによって法的なリスクを軽減するソリューションで、従来のソリューションと合わせて、End to Endのコンテンツ管理を実現できるという。

コグノス社の統合によって大幅に強化されたソリューションもある。コグノス社はBIとパフォーマンス管理の分野において業界をリードしてきたベンダーであり、特に現状の計測と監視、原因の分析とレポート、次に実施するべき計画の立案という一連の流れを連続的に実施するパフォーマンス管理フレームワークは高く評価されている。IBMで提供されてきた従来のBI/パフォーマンス管理ソリューションにコグノスが統合されたことによって、顧客のパフォーマンス管理の発展をより強力にサポートできるようになったとのことだ。

問題の解決から次の計画の立案までを一環して行うパフォーマンス・マネージメント

その他、2008年第2四半期に日本での出荷が予定されている製品として、「IBM Information Server」および「IBM InfoShpere Meta Data Management (MDM) Server」が紹介されている。IBM Information Serverは、異機種混在環境において、構造化データ、非構造化データ、過去データ、リアルタイムデータといったあらゆるデータの統合とシームレスなアクセスを提供する。MDM Serverでは、企業内の重要情報をマスターデータとして管理することで、全社的に活用可能な情報のシングルビューを実現するという。

Picciano氏は、「顧客は正確で信頼できる情報を必要としています。その情報を単に管理するだけでなく、プロセスに統合していくことがインフォメーション・オンデマンドの真の価値です。このインフォメーション・オンデマンドというコンセプトを業界に広く流布していくことが、2008年におけるIBMの目標の1つです」語った。