NECエレクトロニクスは4日、車載半導体事業の強化に向け、32ビットマイコン「V850E/PHO3」の量産ならびにトランシーバLSI「μPD72751」のサンプル出荷を開始したことを発表した。サンプル価格は、V850E/PHO3が5000円、μPD72751が1000円。μPD72751の量産は2009年から行われる。

32ビット車載用マイコン「V850E/PHO3」(左)とトランシーバLSI「μPD72751」(右)

V850E/PHO3は、次世代車内通信プロトコル「FlexRay バージョン2.1」に準拠したマイコン。0.15μmプロセスを採用し、CPU動作周波数は同社のフラッシュメモリ搭載型のV850で最高クラスとなる128MHzを実現。16ビットPWMタイマなどの周辺機能を搭載することにより、電動パワーステアリング、ブレーキ、サスペンションなどのシャシー制御に対応している。

また、車載半導体向けとしてセーフティ機能を強化。CRC回路を搭載してCPU内部の信号を観測することで、システムを動作させた状態で、CPUが自身の故障を検出する機能を搭載している。これにより、カスタマは自動車に搭載されたLSIが起動時に問題なく動作しているか否かを実装状態で自己診断することが可能となる。このほか、コード/データフラッシュのデータに対し、2ビット故障検出機能をサポート。1ビット故障の検出/補正と合わせて2ビット不良を検出することで、データ異常検出の機能向上を図っている。

なお、同社では、車載マイコンを用途に応じてシリーズとしてラインナップしているが、V850E/PHO3はいずれのシリーズにも属さない製品となっている。これは、「少なくとも複数個の製品がラインナップされなければシリーズとして提供しない」(同社マイクロコンピュータ事業本部 自動車システム事業部長 金子博昭氏)ということであり、あえて括るのであれば「次世代の90nmプロセス品で予定しているシャシー系の"P"と同系品」(同)となる。90nmプロセス採用マイコンは09年度のサンプル出荷を予定。

NECエレクトロニクス マイクロコンピュータ事業本部 自動車システム事業部長 金子博昭氏

一方、μPD72751は、FlexRayコンソーシアムおよびJasParの要求規格に準拠したトランシーバLSI。車載用途のノイズ環境を考慮した高耐電磁気特性と低ノイズ放射特性を両立している。FlexRayでは、通信回路を2重に使用することから、μPD72751も2個同時に使用される。採用プロセスはアナログCMOSの0.35μm。1つ上のプロセスとなる0.25μmを用いなかった理由は、「アナログのプロセスは微細化してもコスト的にあまり変わりがない」(同)ことと「0.25μmに比べ、0.35μmの方が使用できるIPが多い」(同)こととしている。

V850E/PHO3とμPD72751の使用例

V850E/PHO3とμPD72751を用いたFlexRayの通信デモ(通信回線が2重になっていることが分かる)

V850E/PHO3およびμPD72751の量産規模は、2012年度にそれぞれ月産20万個と40万個を予定している。同社では、車載半導体市場に対し、年平均10%の成長率を継続し、2015年度に売上高2,000億円を目指すとしている。