計測機器の大手ベンダであるアジレント・テクノロジーは21日、東京都内で会見を開き、オシロスコープの新製品2シリーズを発表した。新製品となる「InfiniiVision 7000シリーズ」はミッドレンジクラスの製品で周波数帯域は最大1GHz、「Infiniium 90000Aシリーズ」はハイエンドクラスの製品で最大13GHzまで測定できる。同社の執行役員である梅島氏は、今回の新製品投入により「オシロスコープのトップベンダであるテクトロニクスに負けない製品群をラインアップできた」と自信をみせた。

アジレント・テクノロジー 執行役員 電子計測本部長の梅島正明氏。会見では「オシロスコープ市場でトップを狙う」との抱負を語った。まずは販売金額ベースでトップを獲得し、続いて販売台数ベースでトップを目指すという

アジレント・テクノロジーのオシロスコープ製品群。製品発売年ごとに色分けしてある。なお右端は、競合であるテクトロニクスの製品群である

ミッドレンジクラスの「InfiniiVision 7000シリーズ」

ミッドレンジクラス製品である「InfiniiVision 7000シリーズ」は、アジレント・テクノロジーが2005年2月に発売した「DSO/MSO6000シリーズ」の上位機種に相当する。この「InfiniiVision」は、「DSO/MSO」(デジタルストレージオシロスコープ / ミクスドシグナルオシロスコープ)にかわる同社の新ブランドである。この新ブランドの立ち上げにより、既存の「DSO/MSO6000シリーズ」と「DSO5000シリーズ」は今後、「InfiniiVision 6000シリーズ」、「InfiniiVision 5000シリーズ」となる。

「InfiniiVision 7000シリーズ」の特徴は何といっても、12.1インチという大きなカラーTFT液晶ディスプレイを搭載したことにある。同社によると、このディスプレイは周波数帯域が1GHz以下のオシロスコープのなかでは最大級という。既存の「DSO/MSO6000シリーズ」と「DSO5000シリーズ」のディプレイはいずれも6.3インチのカラーTFT液晶ディスプレイだったので、表示面積はおよそ4倍に拡大したことになる。解像度はともにXGA(1024×768ピクセル)である。

本製品の波形メモリ長は8Mポイント、波形更新速度は最大10万回/秒。チャネル数(アナログ信号入力)は2または4。アナログ/デジタル信号(ミクスドシグナル)入力に対応したモデルについては、16チャネルのデジタル(ロジック)入力端子を備えている。本体の外形寸法は幅45.4cm×高さ27.7cm×奥行き17.3cm、重さは5.9kgとややコンパクトといえる。

本シリーズは、周波数帯域やサンプリング速度などの違いによって、10種類のモデルを用意している。価格については、周波数帯域が350MHz、サンプリング速度が最大2Gサンプル/秒で2チャネルのアナログ信号入力を備えた「DSO 7032A」の場合は86万7,639円、同じ仕様でデジタル信号入力を備えた「MSO 7032A」は112万3,562円。さらに周波数帯域が1GHz、サンプリング速度が最大4Gサンプル/秒で、4チャネルのアナログ信号入力を備えた「DSO 7104A」は174万1,678円、同じ仕様でデジタル信号入力を備えた「MSO 7104A」は223万4,843円である。

会見で展示された「InfiniiVision 7000シリーズ」の「MSO 7104A」。周波数帯域は最大1GHz、サンプリング速度は最大4Gサンプル/秒。4チャネルのアナログ信号入力と、16チャネルのデジタル信号(ロジック)入力を備えている

ハイエンドクラスの「Infiniium 90000Aシリーズ」

ハイエンドクラスの製品である「Infiniium 90000Aシリーズ」は、同社が2006年2月に発売した「Infiniium 80000Bシリーズ」の機能拡張版である。80000Bシリーズと同様に、最新の高速シリアルインタフェースに準拠した信号を計測するために開発した。周波数帯域幅とサンプリング速度は80000Bシリーズと同様、それぞれ最大13GHz、最大40Gサンプル/秒である。同社によると、13GHzの周波数帯域幅があれば、ほとんどの高速シリアルインタフェースの計測に対応できるという。例えばPCI Express Gen IIとフルバッファDIMM(FB-DIMM、FBD)はいずれも、12.5GHzの周波数帯域を必要とする。

各種の高速シリアルインタフェースと、オシロスコープでの信号測定に必要な周波数帯域幅

90000Aシリーズと80000Bシリーズの最も大きな違いは、波形メモリの容量にある。90000Aシリーズはオプションであるものの、最大で1Gポイントときわめて長大な波形メモリを入力チャネルごとに搭載できる。標準でも10Mポイントの波形メモリを入力チャネルごとに搭載した。既存機種の80000Bシリーズでは波形メモリの容量が標準512Kポイント(2チャネル入力)、最大2Mポイント(2チャネル入力)だったので、新製品では波形メモリを大幅に増やしていることがわかる。

ただし、あまりにも長大な波形メモリを搭載すると、データを読み出してからディスプレイに表示するまでの所要時間が長くなるという問題がある。そこで90000Aシリーズでは、内部のデジタル信号処理回路にFPGAベースのハードウェアアクセラレータを組み込み、波形を更新して表示するまでの所要時間を短く抑えた。

またカラーTFT液晶ディスプレイの大きさについても、80000Bシリーズでは8.4インチだったものの、90000Aシリーズでは12.1インチに拡大した。なお、ディスプレイの解像度はいずれもXGA(1024×768ピクセル)である。

「Infiniium 90000Aシリーズ」では、周波数帯域幅が2.5GHz~13GHzの範囲で異なる6機種を用意した。また高速シリアルインタフェースの解析ソフトウェアをバンドルするとともに、標準搭載の波形メモリを20Mポイントに増やしたモデルを供給する。型名は前者が「DSO9xxxxA」、後者が「DSA9xxxxA」である。価格は、帯域幅が2.5GHzと最も安価な機種が345万円。そのほかの機種の価格は公表していない。

会見で展示された「Infiniium 90000Aシリーズ」の「DSA91304A」。周波数帯域幅は13GHz、サンプリング速度は最大40Gサンプル/秒、入力チャネル数は4