独Bayer MaterialScienceは、豊田通商とBayerの多層カーボンナノチューブ(MWCNT:Multi Wall Carbon Nanotube)「Baytubes」の代理店契約を締結した。同契約により、豊田通商は日本のほか、香港、シンガポール、韓国、台湾、インド、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナムで独占代理店としてBaytubesの販売を行う。

Bayer MaterialScience CNT 事業責任者 Martin Schmid氏

日本企業との代理店契約について、Bayer MaterialScienceのカーボンナノチューブ(CNT)事業責任者のMartin Schmid氏は「CNTの分野において、日本はアジアで第1位、全世界でも第2位の投資規模を誇る重要なマーケット。進出する価値は十分ある」と語る。同社と豊田通商が代理店契約の締結に向けて動き出したのが2007年の初頭とのことであるから、約1年で日本での本格的な事業展開の体制が整ったこととなる。

Bayerが豊田通商を選んだ理由は、「日本を含めたアジア地域でのビジネスノウハウ」「大きなプレゼンス」「新しい技術に対する強い意志」の3つを持っているためであるとSchmid氏は述べており、両社の強みを持ち寄ることで、アジア地域で良い効果が生み出されるのではないかと考えている。また、豊田通商には代理店として販売以外の役割として、市場からの要望を吸い上げ新規用途の開拓をすることが与えられる。Bayerでは「豊田通商との提携は、我々にとって大きな一歩」(同)と提携の効果に期待を寄せており、Bayerとしても「お互いに連絡を密に取り合うことで、豊田通商のビジネスをサポートしていきたい」(同)と歩調を共にすることを強調する。具体的には、Bayer側からは、同社がこれまで培ってきたCNTに関するノウハウが提供される。特に、ヘルス&セーフティに関することは積極的に伝えていくという。「CNTはまだまだ研究開発が必要な分野。人体への影響、などの情報について材料側から積極的に提供していく必要がある」(同)と情報提供の必要性を説く。

Bayerは2007年9月、ドイツのラウヘンベルクにあるMWCNT製造工場の生産能力を、年産30tから60tにまで引き上げたが、現在、2009年末の稼働に向け、ドイツのレバクーゼンにて新工場の建設を進めている。新工場の生産能力は年産200tが見込まれているが、「実際に稼働すれば生産効率の向上などにより、それ以上の生産能力が達成できるはず」(同)としている。今後も生産能力の拡張を続けていくとしており、「2015年頃までに年産3000tの生産能力の構築を目指す」(同)という。

Baytubesの直径は平均で15nm、純度は97%もしくは99.5%のものが提供されている。Bayerでは、さまざまな材料の特性を変える添加物として産業用途向けに提供しており、豊田通商では、日本を中心としたアジア地域のユーザーに、自動車や家電向けプラスチック材料の添加物として提供する。また、Bayerとしては、プラスチックの次の分野として、リチウム電池への添加やアルミニウムなどの金属への添加も検討している。こうした分野での使用についても「ユーザーの要望次第で提供可能な状態だ」(同)としており、ユーザーとの連携もすでに開始しているという。

右側の黒い斑点がMWCNT。1円玉の大きさ程度で4,000億個が詰められている