10日、東京大学とサン・マイクロシステムズは、2つのテーマに関する共同研究に着手したことを発表した。

テーマの1つめは、「Fortress上でのスケルトン並列プログラミング手法に基づいたライブラリ開発」と言うものだ。

Fortressとは、サン・マイクロシステムズが開発中のプログラミング言語で、HPC (high-performance computing) 向けに最適化されている。「C言語に対してJavaがもたらしたものを、Fortranにも」と標榜されており、コンパクトで拡張可能な言語仕様と、並列・分散処理を容易に書けるのが特徴。

また「スケルトン並列プログラミング」とは、並列処理プログラミングでよく使われる処理を「スケルトン」と言う単位でライブラリ化し、その組み合わせで並列プログラミングを行う、と言う手法。通常、並列処理を意識したプログラミングには複雑で高度なスキルを必要とするが、スケルトン並列プログラミングを使用すれば、並列処理をほとんど意識することなくプログラミングを行うことが可能。東京大学のグループにより研究がさかんに行われている。

これらはどちらも「並列/分散処理を容易にする」と言う目的と、「ライブラリによる実現」という手段の、どちらにおいても一致しているため、この共同研究によって相乗効果が期待される。研究開発の期限は2009年3月末を予定。

テーマの2つ目は「RubyとJRubyでのマルチVirtual Machine(MVM)環境の実現」というものだ。MVMとは「1つのRubyインタプリタ上で複数のVMインスタンスを生成する」というもの。これが実現することにより、1つのインタプリタで複数のアプリケーションを実行できることになり、メモリ使用量の削減や起動時間の短縮などが期待できる。MVMを利用するための共通インタフェースの策定や、VMインスタンス間での並列化/メモリ共有などさまざまな技術的課題を克服して、実際にRuby/JRuby上で利用できる技術の実現を目指す。研究開発の期限は2009年9月末を予定している。

どちらの研究開発に対しても、サンは当初1年間分の予算として10万ドルを拠出する。また、どちらの成果もオープンソースとして公開される予定であり、これらの技術を使用した更なるイノベーションが期待できる。

この共同研究は、「Proprius21」と呼ばれる産学連携スキームを利用して実現したもの。Proprius21とは、産学共同の研究開発において成果を確実なものとするために東京大学が提案しているスキームで、今回が初の海外案件となる。