ユビキタス社会の造成を目指す韓国では最近、行政や企業ぐるみでのユビキタス都市計画が持ち上がっている。

ロボットと人が共存する、Tomorrow City

中でもとくに大規模な造成が見込まれているのが、ソウルの西側にある仁川市の経済自由区域だ。ここはおもに外国企業の誘致を目的とした地域のため、外国企業であれば3年間の法人税などを免除するといった優遇措置が受けられる。松島、永宗、青羅の3地区に分かれており、2020年までに開発される予定だ。

このうち松島地区は情報通信インフラを充実させた、先端ビジネス区域となる。そしてここにTomorrow Cityという、3万1,697平方メートルにもおよぶ未来生活空間が建設される予定だ。先端技術を試験的な提供や広報効果を見込んで造成されるTomorrow Cityでは、いつでもどこでもネットワークに接続して交通情報を得たり、自宅の家電を制御したりといった、ユビキタス生活を実現するという。そんなTomorrow City内でこのたび、ネットワークロボットサービスも実現することとなった。

Tomorrow Cityの完成予想図

情報通信部と仁川経済自由区庁(以下、IFEZ)は、ネットワークロボット事業相互協力等に関するMOU(覚書)を締結したと発表した。これはTomorrow City内に構築されたセンサーネットワークとネットワークロボットとを連携させたサービスを提供するという事業だ。

たとえば食堂でロボットが料理を運んでくれたり、品物を買う際に決済してくれたり、あるいは娯楽施設でロボットが提供する各種エンターテインメントを楽しめるようになる。まさに人とロボットとが共生する空間になるのだ。

ロボットの試験事業は韓国のみならず世界各国で行われてはいるが、「限定された空間で、限定されたロボットの動作を試演するのに留まっていた」(情報通信部)他国に対し、ここでは実際に人とロボットとが生活する中でのサービス提供となる。Tomorrow City自体がネットワークロボットサービスを前提に設計されており、人の実生活に密着した、あらゆる場面でサービスが提供されることとなる。

またネットワークロボットのいる都市の造成と運営だけでなく、eラーニングや健康管理など、多様な分野とロボットとを連携していく計画もある。

こうした計画を進めるのには、韓国のロボット産業活性化やロボットの普及促進といった目的がある。だからこそTomorrow Cityの運営の成否には、韓国のロボット産業の成否もかかっているといえる。

情報通信部とIFEZは今回の事業のために、約60億ウォンもの資金を投入することを決めている。スムーズな事業推進のため、両機関の代表や専門家が参加する協力委員会も発足させて、インフラ普及や新サービスの発掘に努める。

WiBroの新サービスに触れられる、WiBro Town

世界標準にも認定された、WiBro都市の造成も計画されている。WiBro基地局などの装備を開発しているPOSDATAは、WiBroサービスを行っている通信会社のKTと共同で「WiBro Town」を作ると発表した。

POSDATAは、韓国最大手の製鉄会社であるPOSCOが設立したIT企業だ。POSCOといえば、韓国南東部にある浦項市に最初の製鉄所を建設し、同市を一躍工業都市にのし上げたことで有名だ。今では浦項市には、工学系の有名大学であるPOSTECH(浦項工科大学校)などもあり、産学協同の研究などが行われたりしている。

そんな経緯もあり、WiBro Townが造成されるのは、浦項市内の孝谷洞地域だ。POSDATAによる装備や端末と、KTによるサービスが行われることとなる。この際提供されるWiBroの方式は「Wave 2」となる予定。これはMIMOなどが適用されることで、よりスピードアップを図ったWiBroの拡張規格だ。

前述の通り、産業や研究施設、住宅などが密集している浦項市に対してPOSDATAでは「WiBroサービスの需要が高い地域」と分析している。サービス内容は「インターネット接続はもちろん、産・学・研の協力を通じて多様なWiBroの特化したサービスモデルを発掘していきたい」(POSDATA)ということだ。ここで創出された多くのサービスモデルは、韓国内の他の都市をはじめ、世界へ向けても適用していく計画があるようだ。実際のサービスは2008年9月頃になる予定だ。

WiBroは現在、ソウルおよび韓国の主要都市でのみ提供されている。単に人が多い地域でサービスするというのではなく、地域特性に合わせたサービス提供を行えばより実用性の高いサービスモデルが創出できそうだ。

これと同様、前述の仁川経済自由区域のネットワークロボットサービスも、そこに住む人たちの必要性や要望を聞きながらサービスを開発していくことで、より実用性の高さが増すことが期待できる。ロボットもWiBroも、商用サービス商品としてはまだ初期段階にあるが、今回のような計画を通してより地域や生活に密着したサービス開発が見込める。